花束

7月29日、金曜日の話。

5週目なのでお休みだったけど、
教室に行ったら玄関の外に花束が置いてあった。

「古川先生へ」と書いてある。

ご年配のある生徒さんが、置いていってくれたのだ。
おそらく何度もベルを鳴らしたのだろう。
メモ書きだけが貼ってあった。

「短い間でしたが、お世話になりました」
というような内容。

ちょうど車で来ていたので、ひととおり仕事を終えたあとに
彼のマンションまで届けることにした。

彼のマンションはここから車で7~8分。
彼はここを毎日歩いて通っていた。
マンションの下に車を止めて、
かの悪名高い(?)109段の階段を「おいしょおいしょ」と上る。
彼はここを毎日上り下りしていた。

どうやら不在なようなので
息をゼイゼイさせながらメモ書きをして、
玄関に置いてゆくことにした。

廊下からの見晴らしがいい。
三殿台の向こうにランドマークタワーのてっぺんが見える。
海からなのだろうか、涼しい風が吹いてくる。

しばらくの間、
景色を眺めながらボンヤリしていた。