世にもおぞましい禁煙日記

実はすでに禁煙をはじめて三ヶ月近くになる。
でも、これだけはひとつ言っておく。禁煙なんてするもんじゃないよ(特に夏場にはね)。
これって片手にブランデーグラスを持ったオジさんが、気取って書くような逆説的な文章ではない。
心の底から「禁煙なんてするんじゃなかった」。そう思っている。

僕の場合、乗りかかった船だから、いまだに禁煙を続けているだけのことだ。
たしかに肺がんで死ぬ確率は減ったかもしれない。
だけど、人生の中で大切な「間」「一服」「ひと息」「余韻にひたる」「ボーッとする瞬間」....
そういうモノを失ったような気がする。これによるストレスで早死にするのかもしれないよーだ。
このマークとともに...
元来僕は酒はあまり飲まないし、ギャンブルもしない。タバコぐらいは吸っても良かったのだが、それを吸わなくなったことにより、つまらない人間が一人出来上がったような気すらする。
この空虚感は何だろう....そんなことを思いながら、いまこうして文章を書いている。

さて、世の中には自分が禁煙に成功した瞬間に矛先を変えて嫌煙論者になられる方もいらっしゃるようだ。僕はこういう人間にはなりたくないし、なりたいとも思わない。
ただ、いずれ禁煙のメドが見えてきたら、公開しようと思ってblogに日記だけは書いてきた。
せっかくなので公開する。

以下はリアルタイムで書いたもの。

7月12日
もう言ってもいいだろう。禁煙を思い立った。理由は2つ。
1:7月1日からタバコが30円値上げして300円になった。
2:禁煙外来(4月より)や「禁煙パッチ(6月より)」に対する健康保険の適用がされた。
今まで健康に悪いと思っていてもなかなか動かなかった人間にもかかわらず、金銭で単純に動いたりする。僕っていう人間は所詮その程度のようだ。場所的には中区にある禁煙外来の病院が理想だった。だが、予約で10月までいっぱいとのことだ。何軒か電話してみたところ、横須賀の神奈川歯科大学付属病院だったら、明日でも時間がとれるとのこと。こういうのは思い立ったら吉日だ。早速行くことにした。
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7月13日
病院は横須賀の旗艦三笠の横っちょ。

受付でアンケートを書く。

なぜ禁煙を思い立ったのですか?
1.自分の健康によくないから。
2.家族の健康によくないから。
3.人に健康によくない言われたから

「その他」という欄に「値上げしたから」と書く。そして1時間程度のカウンセリングを受ける。
お医者さんによると、このアンケートには決して「正解」があるわけではない。だけど「値上げ」などの理由の方がやめやすいのだそうだ。そりゃあそうだろう。健康によくないとわかりながら、20年も吸ってきたものを、いまさらそれを理由としてやめられるものではない。
そして禁煙宣言書にサインし、日付を明日にする。明日は家内の誕生日だから、まあプレゼントのつもりでいいだろう。最後に血中の一酸化炭素濃度を計測する。通常の人は数値が1~3なのだが、僕の場合この数値が30もあった。
「これはかなり重度の喫煙者の数値ですね」と言われる。
「今日は思う存分吸って下さい。明日からはきちんと禁煙して下さいね」と嬉しいことも言われる。
これを嬉しいと思うようでは、多分僕はマダマダなのだろう。まあいいか。

自分なりに方針を立てる。
●経過は禁煙が一段落するまでは一切ブログに書かない。周囲の目がプレッシャーとなると、禁煙を遂行できないからだ。
●もし禁煙に成功しても、偏狭な嫌煙論者にはならないこと。自分が成功したり信奉したからといって、その思想を他人に押し付けたり、他人を見下すという態度はファシズムそのものだと思う。
●家内が「どうせ成功しないわよ」と言ってくれたお陰で、かえって気持ちが楽になった。「成功したひろいもの」位の気持ちで楽しまないとストレスがたまるだけだろう。
●口を紛らわすための手段は、無糖のガムやキャンデーもいいのだが、無味乾燥な味に飽きてしまうのが一番よくないと考えた。だから甘いものでもいいからなるべく美味しいものを口にすることにする。つまり太るのを覚悟することにした。

深夜、寝る前に最後の一服を吸う。二十ウン年吸ってきた、最後の一本だ。
「フーッ、ウメーなぁ~」
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7月14日(禁煙初日)
普段なら起床すると起きがけの一服を吸うのだが、今日はそれを「ウッ」と堪えて1枚目のニコチンパッチを腕に貼った。この段階で相当ツライものがある。普段であれば夏場は朝風呂に入るのだが、この日は思い切って「みうら湯」へ行ってリラックスすることにした。僕は昔から風呂あがりにコーヒー牛乳を飲みながらの一服が好きだったのだが、今日はガマンする。そして出勤。
禁煙の「離脱症状」という言葉がある。タバコを吸いたいという欲求がたかまることを言う。この離脱症状がほぼ5分に一回程度のペースで襲われた。これは長年の癖にほかならない。何か仕事の動作が一段落すると、自然とポケットに手が伸びる。普段ならばベランダでタバコを吸うのだが、この日は本当に酷かった。自然と体がベランダに向かう、ふとわれに帰って戻る事が何回もあった。

何がタバコを紛らわすのにいいのだろう?
この日はやたらと色々なものを買う。ジュース、飴玉...?おまけに食欲が増進するようで、ミニストップで唐揚げを買って、3時のおやつとして食べる。
結論から言うと、この日の僕のベストは「小夏ちゃん」と「干し梅」、そしてジャスミン茶の組み合わせがベストだった。飴に関しては「小梅ちゃん」が欲しかったのだが、なぜかローソンでもセブンでも定番商品から外されている。何でだ!

7月15日(禁煙2日目)
禁煙は2~3日目が一番キツいのだという。朝から何度離脱症状に襲われたかわからない。
少しでも気を紛らわすため、仕事の合間を見てライブのピアノの練習をする。haruさんに「ムネさん、今日は一日ピアノを練習していたらどうです?」と冷やかされる。
しかしこれが正解だった。2時間ほど練習していたが、その間はタバコを吸いたいとはぜんぜん感じなかった。
ニコチンパッドのせいもあるのかもしれないが、実はこうした「気晴らし」が功を奏したのか、昨日よりは今日の方が穏やかに過ごせたようだ。
困ったのはPCに向かっていると思考回路がマイナスに働くことだった。時折ベランダで体操をして、なるべく気を紛らわすようにした。
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7月16日(禁煙3日目)
禁煙3日目、夕方より唐揚げ&カラオケパーティ。一番山場のタイミングで休みなのは嬉しい。今日も間欠的に離脱症状に襲われる。実は途中でニコチンパッチが腕からはずれてしまったようで、唐揚げ食べている状態でもカラオケを食べている時も、「あめだまなし、パッチなし」の状態だった。ただ皆を話をしたりしているので、気晴らしになったのだろう。この状態ながら何とかしのいだ。
すみくん。さんが僕に遠慮して僕の前でタバコを吸わなかったのだが、僕にしてみれば逆に目の前で吸って欲しかった。今の自分ならば、受動喫煙でも煙が欲しい状態だったのだ。

7月17日(禁煙4日目)
ピークが去ったのか、今日が休日だからかどうかはわからないが、今日の日中は離脱症状も随分落ち着いてきた。初日は5分に1回だったけど、今は10分に一回ぐらいまで落ち着いた。しかし、夜にかけて再び強い離脱症状に襲われた。何とか飴玉でやりすごす。
この日、ローソンで見つけた天狗製菓(静岡県沼津市)の「果汁いっぱいさわやか生レモン」が今までの禁煙の「あて」としてはベストだった。最後まで甘すっぱい飴なので、飽きずに食べれる味だからだ。こういうローカルメーカーのお菓子ってバカにならないんだよなぁ~。
061006_02.jpg7月18日(禁煙5日目)
昨晩に引き続き離脱症状が強い。夕方から昔の上司と食事へ行ったのだが、うっかりニコチンパッチをつけるのを忘れて行ったため、多いに困った。話に盛り上がってその時は比較的忘れられたが、帰宅途中は大変辛かった。

7月19日(禁煙6日目)
今日も離脱症状が強い。仕事中しかり、帰宅後しかり。んでもって集中力が明らかに衰えているのがわかる。ついにコンビニで禁煙パイポを購入。どうも禁煙は一進一退のものらしい。ホッとすると、また襲ってくる。ちょっと思ったのだが、6日禁煙したということは、6*300円で1800円を特したことになる。
おお、廉価盤のCDが買えるぞ!

7月20日(禁煙7日目)
今日で禁煙一週間!昨日に比べるとはるかに穏やかな一日だった。離脱症状のインターバルは急に30分に一回へと下がった。この日から始めた面白いことがある。名づけて「シャドウ・スモーキング」。
離脱症状を感じたら、タバコを吸う仕草だけする。指二本を口に近づけ、深く吸い込み&吐き出す。
これが結構効果あるんだな。

061006_03.jpg7月21日(禁煙8日目)
特筆すべき症状なし。穏やかな一日。

7月22日(禁煙9日目)
昨晩寝るときにニコチンパッチをつけ忘れて寝てしまったせいだろうか、朝から昼すぎにかけては離脱症状が激しくなった。家内が「禁煙飴」なるものを買ってきた。「たばこがだんだんまずくなる...」というのがキャッチフレーズなのだが....漢方薬でも入っているのだろうか、あまりにも不味くて頭がクラクラしてきた。家内には悪いが、僕には「レモン飴」で充分だ。

7月23日(禁煙10日目)
禁煙のせいかどうかはわからないが、この数日間ヘンな夢を見る。
僕は京都の街角にいて、古道具屋をひやかしている。腕には自分の子供ではない赤ん坊を抱いている。いつの間にか赤ん坊は青銅器へと変化している。僕は何かを急いでいるのだが、自分でも何を急いでいるのか把握できない。

7月24日(禁煙11日目)
この2日間は大変順調。ただ禁煙パッチが汗で蒸れてきたのか、貼った場所が水ぶくれのようになってきたのには閉口した。せっかくの休みなので、家族で珍しくカラオケへ行く。

7月25日(禁煙12日目)
本日は病院の通院日、2度目の診断だ。
お医者さん「どうです、続いていますか?」
僕「バッチリ続いています」
お医者さん「そうですか、良かったですね!ニコチンパッチはどうですか?」
僕「見て下さい。はれてしまうほどしっかり貼っていますよ」
そしてこの日、僕の血中の一酸化炭素濃度は30から5に減っていた。






そして月日は流れた





10月6日
この間3回の通院をし、本日最後の診療を受けた。
血中の一酸化炭素の濃度は2まで減っていた。
お医者さんに言わせると今後も半年間は要注意、
そして1年間は注意が必要なんだそうだ。
マサトシさんには「4年間はかかりますよ」と恐ろしいことを言われた。
ともかく今のところよほどのことがない限り、離脱症状はあらわれない。
うまくゆけば一日中それを感じない日もある。こうなればしめたモノだ。
つきあいで1~2服ぐらい吸っても、習慣性にはならないだろう(笑)
そんな恐ろしい言葉を残して日記を終えることにしよう。
(こんな参考にならない禁煙体験も珍しい)。

今日でだいたい1日ひと箱で、¥300*100日=¥30,000を節約したことになる。
おお、結構な額になったじゃん!

Thanks
最初に禁煙の影響を与えて下さったマサトシさん キタさん、ありがとうございました。