かつての同士(上司?)

スクールを始める前、1年ほど契約社員として某大手CDショップチェーンで働いたことがある。
現実には会社はガタガタ、人員もガタガタ。
僕にとっては人生の修羅場といえば修羅場だった。

今日、その時の正社員君と8年ぶりに再会して「鳥佳」で飲んた。

彼は僕よりひとまわり年齢が下なのだけど、もちろん正社員だから職場では上司だった。
若いのに本当にしっかりした奴でガッツもあり、僕の経験と彼の行動力とでタッグを組んで頑張った時期もあった。

だけど僕は自分の人生を優先させなきゃいけなかった。
色々な意味で自分に引導を渡してCD業界と決別をする時期が来ていた。
僕は社員の契約を更新しなかった。

昨年その会社はついに解散した。その時も彼のことが頭に浮かんだ。
ほぼ某大手レンタルチェーンに吸収された形だったので、そこで勤務していると思っていた。
思い切って電話してみたら「辞めた」とのこと...

そうなんだ。今ならお互い怒濤のように会話ができるね。

彼は僕以上にその後の会社崩壊の修羅場をかいくぐった人だから、怒涛のように言いたいことがあるだろう。

そして今日の再会となった。
案の定、お互いに語ることが余りにも多すぎて、気がついたら4時間近くが経っていた。

CD業界のこと。流れに抗って生き残る手段があったか?何であそこまで追い込まれたのか?結局CD業界は我々にとって何だったのか?今後どうするか?ということから始まった話は、新しいビジネスモデルの話、歴史の話(お互いに戦記マニアだった)、憲法の話、独立するには?とかそんな話まで縦横無尽に至った。4時間では話し足りないぐらいの情報量だった。
8年前のお店のスタッフルームと同じ空気だった。

そんな中で、僕自身が忘れていた笑い話が出てきた。
「ムネさん、演歌のシングルを沢山万引きしたおばあさんを捕まえた時のこと覚えてます?」
「いやぁ、覚えてないなぁ」

当時はそういう人を捕まえるとスタッフルームに入れて、警察が来るまで監視しなければならなかった。彼の話では、その時の僕のお説教が傑作だったというのだ。

「そのおばあさんが盗んだ商品の中に"人生一度だけ"っていうタイトルのCDがあったんですよ」
「ほぉ」
「そしたら、ムネさんがこう言ったんですよ。『あのねお婆さん、このCDにも書いてあるでしょ"人生一度だけ"って。だからそういうことしたらダメじゃないですか』って。俺は笑い堪えるのに必死でしたよ。あんなトンチンカンな説教をするムネさんがおかしくて、10年働いた中で一番記憶に残ってます。」

あとは二人で腹を抱えて笑ったのだった。

まだまだ話が足りない中で、今週土曜日の東京湾要塞 第三海堡遺構見学ツアーに欠員が出た話をしたら「参加します!」ということになった。当時は知らなかったけど彼も建造物マニアなんだって。