車を買った話

僕の父は学生の頃から「超」のつく車マニアだった。

昭和30年代の初頭、自動車部に入部した父は、
払い下げの車の修理とメンテナンスを自ら行い、
まだ高速道路すらなかった日本のガタガタ道を
縦横無尽に走り回っていたのだ。

70歳を越えた父であるが、相変わらず運転はワイルドだ。
かつて営業車で月1000キロ以上を乗り回していた僕が、
舌を巻くようなドライビングテクニックを持っている。

そんな我が家の家憲は「車は中古車を買え」だ。

単にお金がないのを開き直っているだけなのだが、
「車はしょせん消耗品に過ぎない」と
言い切ってしまう父の言葉には説得力がある。
そうやっておそらく15台以上の中古車を、父は乗り潰してきた。

中には「日野ルノー」「マツダルーチェ」「プリンスグロリア
なんていう伝説的な名車もある。
ただし購入時期から考えると10年落ちの中古を、
相当安い値段で購入していたようだ。
そうした車の見立てに関しては、超一流の人間である。

そういう父がいるせいだろうか、
以前「それでも車は生きている」でも書いたことだが、
僕自身は車にかなり無頓着に育ってしまった。
車種とグレードは、全くわからない。
そもそも車を見ても車名などわからない。
「4輪があって走ればいい」というようなところがある。

さて、車検を取った直後に2回も故障したWindom君だが、
幸いにも引き取り先が決まったため、
引き換えに7人乗れるIpsumという車を購入した。
年式は98年。値段はボチボチ。

購入した理由は簡単だ。
教室のイベント時に便利かなと思ったのと、
家族で行き当たりばったりの旅行へ行くとき、
車中泊が可能だということだ。

何にもまして気に入ったのは、
現にお隣さんが乗っていることだった。
非常に運転しやすく、乗り心地もいいそうだ。
たまたま近所の中古車屋にあったこともあり、
二軒並んで同色同型のIpsumが並ぶという、
わけのわからないことになってしまっている。