99歳

僕のカミさんのおばあちゃんは、実に誕生日が覚えやすい。何しろ明治45年6月7日生まれだからだ。

明治45年といえば.....
1月には中国では清が滅びて中華民国が成立、
4月にタイタニックが沈没、
7月29日に明治天皇が崩御、30日に大正に改元している。「剣岳 点の記」の作家新田次郎とは一日違いで生まれたようだ。
まだ夏目漱石も、徳川慶喜も、森鴎外も、山県有朋も生きていたような、そんな時代だ。

おばあちゃんは京都の鳴滝のお米屋さんの娘だった。もしかしたら日本映画史に燦然と輝く「鳴滝組」を間近に見ていた可能性もある。「映画作っているような"おかしな人"が沢山おりましたわ」と、聞いたことがあるからだ。

そんなおばあちゃんは東京で仕事していたこともあるらしい。
きっと「モガ」だったんだろうなと勝手に思っている。何しろこの人はずっと「大正元年生まれ」と言い続けていた。ある時「6月7日生まれ」というのを知ったので、「だとすれば(改元前だから)明治45年じゃないんですか?」と尋ねたところ、「だって"大正"生まれと言った方が若く見られますやろ」とニヤっとしたぐらいの人だ。

そんなおばあちゃんは、おとといで99歳を迎えた。

GWにお会いした時にはiPhoneのピアノアプリを触って、「えらいものやな~」と驚いていた。
最後に唱歌「茶摘」を歌ってくれた。

(四世代揃った写真)

僕の祖母は2007年に97歳、2009年に95歳でそれぞれ旅立っている。そしてこの3月には祖母の姉が104歳で大往生した。
今となっては、このおばあちゃんが唯一祖父母世代の肉親で、唯一明治生まれの肉親となってしまった。
これからもずっと長生きしてください。

ある日、カミさんにこう言われたことがある。
「あなたは(自分の好きなように生きてきたから)絶対長生きするわよ」

よく言うぜ、と思った。

どうみたって女性が長生きの家系同士じゃないか。