箱根大涌谷付近の火山活動を見学してきた

本当は前記事「善光寺地震と小松原断層」に続いて「善光寺地震と臥雲の三本杉」というのを書こうとしていたのです。どちらも大自然がもたらす脅威についての内容です。

ところが地元神奈川で箱根大涌谷付近の火山活動が活発化している。ついに噴火警戒レベル2(火口周辺規制)となってしまった。
こういうことが起きるとじっとしてられない性分だし、こういう時だからこそ箱根にお金を落とさなきゃという妙な義侠心とで、カミさんを連れて箱根へと行ってきました。

(今回のスポット地図)

東名御殿場ICから乙女峠を越えて仙石原へと入るわけですが、予想に反して車の量も多く「なんとか美術館」「なんとかミュージアム」の駐車場もそこそこ埋まっています。それと観光客も普通に歩いています。日曜日に箱根に行くことが絶えて久しいので比較はできませんが、僕のように「今が狙い目」と考える人がいて「気軽に宿泊や移動ができる箱根」を楽しんでいる人がかなりいるという印象を受けたのです。
大涌谷周辺 通行止めの標識
とりあえず車を姥子のパーキングに止めて、バスで大涌谷方面へと向かいます。

5月6日の噴火警戒レベル引上げで大涌谷付近の火口を中心とした半径300mが立ち入り規制がされましたが、それにあわせて車の進入が禁止されているのは、県道734号と735号が接続するT字路から大涌谷駐車場までの1.2kmほどの区間、そして県道沿いから大涌谷への遊歩道もすべて閉鎖されています。

(地図だとAの地点から、規制区間の入口をぐるっと撮影してみました)

箱根大涌谷への県道734号閉鎖
規制を告げる看板。こういう時でも「大変ご迷惑をおかけします」なのが日本的。
黒たまごの販売はありません
(黒たまごの販売はありません)

県道734号を400mほど強羅方面へ歩いたところで(地点B)、県道から50mほど奥まった斜面から噴気が立ち上っているのを発見しました。
箱根、上湯配水池付近の噴気
位置的には大涌谷の駐車場からから真北に500mほどの地点、ちょうど上湯配水池という設備があって、その裏側斜面となります。

幅100m、奥行きは確認できる範囲で200mぐらいでしょうか?斜面全体から噴気がもうもうと立ち上がっていて、木々がその影響で倒れています。見上げると斜面がやや平面な場所では立枯れている木々も確認できます。あるいはこのあたりが噴気の上限で、辛うじて倒木を免れているのかもしれません。

(この動画のみ、スマホのYoutube専用アプリとSafari系ブラウザで「再生できません」になるかもしれません。ブライアン・イーノ使っているからです。)
あまりにも幻想的な風景なので、ブライアン・イーノの音楽をBGMにしつつ、お送りします。

倒木の状態からみると、昨日今日に発生したものではなさそうです。
調べてみると「神奈川県温泉地学研究所」の報告書のひとつ「箱根大涌谷の北側斜面における近年の地表面変化と熱赤外カメラによる観測」に詳細が報告されていました。2001年の箱根群発地震以降、大涌谷北側斜面の少なくとも5か所での噴気が確認されるようになったこと。今僕がみている地点は報告書によれば「E地点」となるわけですが、2003年2月頃から噴気が確認されているとのことです。それが活発化したのは2011年の東日本大震災後であり、「一つの可能性」としてあの地震が「遠因となり引き起こされたと見ることができるかもしれない」と述べている。

あわせてGoogleのストリートビューなどでも調べてみたのですが、そこに記録されたものとは違って、現在は地表を噴気が覆い隠すぐらいになっており、明らかにエスカレートしているのがわかります。
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(2014年3月時点のGoogleストリートビュー)

ちなみにこれは2009年の状況。
0911_google
(2009年11月時点のGoogleストリートビュー)
うっそうと緑が生い茂っており、ポンプ施設(?)の建物もあったようです。

ちなみに航空写真。
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(Googleマップ航空写真)

そこから県道沿いで噴気が噴出している場所がありました。
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(県道734号、冠峰楼入口付近の噴気。硫黄が含まれた高温度の空気は鉄=ガードレールを腐食させてしまうんですね)
今は休業しているようですが「冠峰楼」という旅館前の県道でして、前掲の報告書によれば地点Cとなります。以前は「上湯」のバス停とコンクリートブロック作りの待合室(箱根によくあるもの)があったようですね。
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(噴気をパイプから逃がしています)
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(雨水を流していたと思われるパイプの真下から、新たに噴出しています)

こうやって見ていると、すでに10年以上前から、配水池や県道とかバス停といった生活インフラに大切な場所、逆に言えば想定していなかったような場所で噴気が噴出していたことがわかると思います。

さらに400mほど歩いていったところ、大涌谷の噴気が一番間近で観察できる場所がありました(Google MapのC地点)。
ちょうど「下湯」バス停のあるところで、メディア関係の方々が定点カメラをおいて取材活動を行っていました。

(大涌谷の噴気)
過去の大涌谷では、どちらかと言えば湯気がゆらゆら状態ののどかなものでしたが、これほど轟々と音を立てて天高く噴気が吹き上がることはなかったと思います。
大涌谷の噴気
この撮影場所、「箱根温泉供給株式会社」への入口にあたる場所でもあります。
HPによればこの会社では仙石原から大涌谷まで温泉用の水を揚水し、それを火山性の噴気(蒸気)と混合させて温泉を造成しているそうで、それを仙石原や強羅方面の温泉に供給しています。大涌谷の温泉混合施設はたちどころに供給管に硫黄や湯の花が付着して詰まってしまうので、一日二回はメンテナンスが必要なんだそうです。そんな中で5月6日にスタッフの施設への立ち入りも禁じられ、温泉の安定供給が懸念されたのですが、7日のニュースによれば、現在は特別許可を得て危険をかえりみずに源泉のメンテナンスを行っているとのことでした。
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(同地点のGoogle Map)
この下湯バス停から先は大涌谷とは尾根を挟んで反対側になってしまうので、ここから姥子へバスで引き返すことにします。
伊豆箱根バス

その後で有感地震は3度ほどありました。「ズン」と一回だけ突き上げるような直下型の地震でして、報道もされていた18時7分の地震(震度2)は2回目のものです。芦ノ湖畔湖を撮影している時に感じました。
箱根は相変わらず平穏で、観光客も沢山いました。もちろん僕のように稀有な火山現象を自分の目で確認したいと来る方も多かったと思います。下湯バス停付近は結構混雑していましたから。