BEZ RECORDでスターボーをみた話
(またもやアジアカップ決勝をみながら書いてます)
BBCのリッケンさんからメールがあった。
「BEZ RECORDにスターボーの映像があったよ」。
鎌倉街道の通町の交差点の近くにあるお店「BEZ RECORD」は以前から気になっていたお店だった。
決してレコード屋さんではなく「1960~70年代のモノならなんでもあるマルチメディア居酒屋」だということを聞いていた。
そこに、開いてはいけない日本芸能界のパンドラの箱「スターボー」の映像があるのだという。
(BEZ RECORD前のリッケンさん)
スターボーについては以前「スターボー」という記事にしたことがある。
ひとことで言えば太陽系の惑星「スターボー」から地球に「AI(愛)」を伝えるためにやってきた「宇宙三銃士アイドル」だ。テクノカットで宇宙服を着ていて無口無表情とというのが「売り」だった。デビューシングルは(今聞くとどこがテクノなんだかよくわからないけど)細野晴臣作曲の「ハートブレイク太陽族」。
しかし当初の使命はどこへやら、セカンドシングル「たんぽぽ畑」でつかまえて」からはフリフリのスカートで聖子ちゃんカットといういでたちで登場。さらにサード・シングル「サマーラブ」を最後に芸能界から消えてしまった.....まあ無理して言えばPerfumeのコンセプトを30年前にやっていた3人組だった。
そんな彼女たちの秘蔵映像なら見てみたい。そこでリッケンさんに連れていって頂くことにした。
場所は(上大岡からみると)鎌倉街道の通町の交差点を井土ヶ谷方面に曲がり、一つ目の角を左に入ったところだ。
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まず、店頭にキャンディーズとジャニス・ジョプリンが並んでいる時点で、何かが始まっている。
(キャンディーズとジャニス)
店内に入ると、そこは宝箱をひっくりかえしたかのように、キャンディーズ的なものとロック的なものが入り混じっている。
店内ではキャンディーズのライブ音源が流れていた。
ああ、この音源の話は以前リッケンさんから聞いたことがある。ご店主が1970年代に有楽町の日劇で「海賊録音」したものだという。驚いたことに自分の客席の前にマイクスタンドを立てて、普通にレコーダー(オープンリールではないか?音質がいい)で録音したのだという。当時はそれが許される、実におおらかな時代だった。
はい前半終了
驚いたのは、当時のキャンディーズがディープ・パープルもタートルズもカバーしていたということ。
よく店内のテレビモニターを見ると、音源に連動してキャンディーズの懐かしい画像がスライドショー形式で動いている。
「これは誰が作ったんですか?」と尋ねると、横に座っていたお客さんが「僕です」。
みると僕より5歳ぐらい上だろうか?カウンターでノートパソコンを広げている方がそう答えた。
BEZの店主の秘蔵音源を元に当時のキャンディーズの映像をスライドショー形式でDVD化したのだという。
何と映像の時間は約1時間30分。これを聞いて僕は驚いた。
僕も仕事がら静止画のスライドショーを作るけど、1時間30分というのは想像もつかない労力だ。一枚の静止画を6秒としても、1分で10枚のキャンディーズの画像が必要だ。まして1時間30分としたら....使用されたキャンディーズの画像の数は1000枚!
インターネットから実際に使えるものを集めてもせいぜい6割程度だったろう。残りはすべて「画像をスキャンした」のだという。しかもライブ音源やMCに連動した内容の画像がセレクトされている。これには恐れ入るしかなかった。
(BEZ RECORDの店頭に飾られているレコード。ジェファーソン・エアプレインとあべ静江が混在している時点で、何かが起こっている)
ちょっと待て、ああそうだ「スターボー」の話だ。
そんな力作の映像が流れた後、リッケンさんがリクエストしてくれた。
「チャプターがないので」という理由で流れ出したのは、1980年代の音楽番組に出演するアイドル映像の数々.....
実はこの時代のアイドルは詳しくないので、見たまんまにメモってみた。
武田久美子、森下由実子、ソフトクリーム、ベリーズ、徳丸純子、大沢逸美、北原佐和子、水野きみこ、仁藤優子、伊藤智恵理、石川秀美、小泉今日子、早見優、石野真子......決してYoutubeからダウンロードしてきたものではなく、明らかに当時録画したビデオからダビングしたDVDだ。当時の僕は1960年代のロックにどっぷりハマっていたために、せいぜい名前ぐらいは知っていても、誰が誰だかわからない。
「俺もそうだよ。当時は洋楽ばっかりだったから」とリッケンさん。
だけどリッケンさんの方がずっと詳しいぞ。
そうしているうちに唐突にスターボーが登場した。
「ハートブレイク太陽族」「たんぽぽ畑でつかまえて」「サマー・ラブ」というリリース順に映像が流れていった。
「宇宙三銃士」として太い声で歌おうとする彼女たち....イメージチェンジをしてアイドル然と振舞う彼女たち....
フリフリのスカート、聖子ちゃんカットで歌う彼女たちは、ただのキャンディーズのコピーであり、時代が1982年だということを考えたら、すでに時代とズレている印象を受けた。
楽しかったのだろうか?ただ辛かったのだろうか?そんなことを思いつつ見ていると、リッケンさんが呟いた。
「こんなことをするためにデビューしようと思ったわけじゃないのにね」。
その言葉には大変な重みがあった。
すでに25年以上も前のさまよえる霊魂たち。
学ぶこともある、新しい発見もある、だけど「ここ」からは出てこないで浮かんで下さい浮かんで下さい。
お客さんがすいてくると、今度はザ・ゴールデン・カップスのファンの方々が来店した。
ご店主がおもむろに「ワン・モア・タイム」の映像を流しはじめる。Cupsの話でひとしきり盛り上がる。
そのお客さんのひとりはケネス伊東在籍時代のカップスのステージを見ているのだという。滅茶苦茶貴重な体験だ。
はい後半終了
明日も仕事だったので、僕は中座してお店を後にした。
深夜、原付で自宅まで25分の道のりは、凍えるほど寒かった。
でも、この店が持つアヤシゲな魅力が持つ中毒性には際限がないように思った。
今回はアイドル映像がメインの話になってしまったが、このお店のもうひとつの側面であるロックのレアな映像については、また別の機会に訪れて書こうと思う。
連れていってくださったリッケンさん、本当にありがとうございました。
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