青森を舞台にした映画ガイド
という、超マニアックなネタ。
GWに青森へ行き、その直後に三上寛さんに会ったおかげで、未だに頭の中が青森ブームだ。この地をビジュアル面で楽しむとしたら、やっぱり映画ということになる。そこで備忘録的に過去に見たことのある映画を整理してみよう。
●「飢餓海峡」
1964年、内田吐夢監督
元々は高校生(千葉県でした)の時に授業をサボって葛飾区青戸の京成名画座で2本400円(!)で見た映画。当時の僕はしばしば授業をサボって映画を見に行っていた。何しろ僕の高校は校則がユルいことで有名だったのだ。
舞台の発端は北海道。岩内町の大火と洞爺丸沈没事件という実際の二つの事件をモチーフにしたサスペンス。下北半島で出会い行きずりの一夜を共にした男と女の人生が、長い歳月を経た後、思いもかけぬ形で交錯してゆく。
この映画を撮影した当時、内田吐夢監督は大正時代の無声映画時代から40年以上のキャリアがあったわけだけど、晩年にこれだけの名作をモノにした力は驚嘆に価する。僕にとっては日本の名画5本の指に入る作品。
水上勉の原作にも申し分なく、「砂の器」「人間の証明」が再ドラマ化された今、最もドラマ化を期待したい作品。
●「家族」
1970年、山田洋次監督
僕の高校には毎年「映画鑑賞会」というのがあった。体育館で映画を観るのだ。
順番は忘れたが、3年間で「アンネの日記」「太陽を盗んだ男」そして「家族」を上映した。
長崎の炭鉱に住む家族が、列車を使って北海道に移住する話。その長い旅の中で時代の荒波に翻弄され、様々なドラマが生まれてくる。福山の弟家族は祖父を預かることを拒み、慣れない大阪梅田の地下街で道に迷い、大阪万国博覧会はゲート外から眺めるだけ、幼い娘は東京で亡くなり、ようやくたどり着いた北海道で祖父は亡くなる。
地味な作品かもしれないが、僕は何度も観ている。この中に短いシーンだが、青森駅から青函連絡船に乗りこむシーンがある。チョイ役で出演した渥美清とクレイジーキャッツが印象的だった。
●「津軽じょんがら節」
1973年、斉藤耕一監督
おそらく最初は予備校の夏期講習をサボって池袋の文芸座で見た映画。当時600円~900円で2本立てだったと思う。
津軽半島の寒村(十三湖あたりか?)に都会で人を殺めた男が恋人と逃げてくる。そこは恋人の故郷だった。男はそこで目の不自由な少女と出会い、やがて恋におちてしまうのだが、最後には悲劇的なエンディングが待っている。
厳しい津軽の自然が描かれていて、バックには津軽三味線がガンガン流れる。そんな日本的な原風景を描いているにもかかわらず、独特のニヒリズムが貫かれており、フランス映画みたいに洗練された作品なんだから不思議。
●「田園に死す」
1974年、寺山修司監督
寺山フリークだった僕は、これを映画館で何度も見ているので、初見場所は記憶にない。最初に見たのはたぶん高校2年の頃だったと思う。
青森が生んだ鬼才、寺山修司による最高傑作。若き日の三上寛さんも出演している。主に恐山が舞台。ストーリーやテーマがあることはあるのだが、どちらかと言えば、寺山が生み出した独特のイメージを「楽しむ」映画。
風船女、蛇女、兵隊バカ、安産帯をつけた犬、恐山でチェロを奏でる男...e.t.c.
青森県にとってはもしかして不幸な話だが、僕にとっては、この映画のイメージが青森のイメージとなってしまった。J.A.シーザー作曲のサントラもかっこいい。
●「八甲田山」
1977年、森谷司郎監督
この中ではリアルタイムで見た最も古い映画。当時阿佐ヶ谷にあった映画館に、祖母からお小遣いを貰って見に行った。以前にも書いたように、明治35年に八甲田で発生した雪山遭難事件(世界の山岳遭難史上でも最悪の事件だった)をベースにした新田次郎の小説「八甲田山死の彷徨」を原作に作られた映画。慣れれば何てことはないのだが、登場人物の大半が雪ダルマ状態なので、誰が誰やら?といった具合だ。当時の日本では記録的な観客動員数を獲得した。
●「竹山ひとり旅」
1977年、新藤兼人監督
これまた予備校生もしくは高校3年生の時に、池袋の文芸座でリバイバル上映を見たんじゃないかな。あそこはこういう映画(日本アート・シアター・ギルド=ATG系)の映画ばかりやっていたように思う。「田園に死す」もたぶんここで見たのだろう。
世界的な津軽三味線奏者だった高橋竹山(たかはしちくざん 1910-1997)。彼の幼少時から40歳ぐらいまでの漂白時代を描いた作品。青森から北海道に至るまで、様々な場所で門付けをしながら生計を立てる竹山、そして旅先で彼と交錯する様々な芸人たち....単なる伝記映画ではなく、歴史からなぜか抹殺されてしまった漂白の芸人たちの生活をリアルに再現した点で評価したい作品。この後「漂白の民」に関する本を色々読んだ思い出がある。いつか子供が生まれたら、失業しても三味線の門付けをできるだけの芸は教えておかなければいけないと、本気で考えたことがある。
●「海峡」
1982年、森谷司郎
高校2年生の時にマトモに金を払ってロードショーで見た映画。おそらく市川駅の近くにあった映画館だと思う。とにかくあの頃は今では考えられない量の映画を見ていた。レンタルビデオ時代の直前だったしね。
これは大自然の驚異と戦いながら青函トンネルを掘る男たちの映画。とてもつまらなかったという記憶しかない。ちなみにこの映画公開当時、トンネルはまだ貫通すらしていなかったはずだから、当然ドラマチックな結末はないわけだ。それを承知で見に行った自分の心理がわからない。
●「素敵な夜、ボクにください」
2007年公開予定、中原俊監督
この記事を書くにあたって、「青森 舞台 映画」でググったら、出てきた。この映画に限らず、青森県では今、映画ロケ地の誘致を積極的に行っているようだ。
さて、この作品だが、「カーリング」を通して「韓国人コーチ」と日本人選手が恋愛する映画らしい。おいおい、僕の知っている「青森映画」がとはかなり違うノリになりそうだぞ。
こうやって並べてみると、青森を舞台とした映画って意外と多いんだよね。たぶん独特の旅情を誘う上に、厳しい風景が「絵」になるんだろうなぁ。ところで、70年代に集中しているのはなんでだろう?
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