Lief Hall in Japan at 渋谷Home
…というタイトルではあるんですが、今日語ってみたいのは今回のライブで気づいたエレクトロニカとミニマル・ミュージックと言われる世界の話。
ミニマル・ミュージックって何だ?っていう事から語るわけだけど、これは音楽のいちスタイルというよりはもっと広い....そう思想みたいなものなんだと思います。
わかりやすい説明がWikiにありました。
余計な装飾を一切排し、音の動きを最小限にとどめ、パターン化された音型を反復させる音楽(Wiki)
いや、これじゃあさっぱりわからない。
でも、これを聞けば「ははぁと」思うでしょう。
テリー・ライリー [ Terry Riley ]という人が1968年にリリースした「A Rainbow in Curved Air」というアルバムです。当時のシンセサイザーで紡がれた音の洪水はとても規則的で無機的なものです。 こういうのがミニマル・ミュージック、つまり「最小限の音楽」です。
この「ミニマル・ミュージック」に飛びついたのがThe WhoのPete Townshendでした。彼は1969年の名盤「Tommy」の印税を惜しげもなくシンセサイザーにつぎ込み、次のスタジオアルバムに備えたのです。
Peteは、彼が敬愛する宗教家のミハー・ババの人生に関するデータ(生年月日と書いた本もあれば、略歴と書いた本もある)をシンセに入力したら、ある主のミニマルミュージックになったなったという事を語っています。僕はそれを真に受けてはいませんがね。そしてこんなサウンドが生まれました。
(The Who – Baba O’ Riley [1971])The Whoのサウンドといえば、エモーショナルなロックです。彼は有機的で自由奔放なロックサウンドと無機的なミニマル・ミュージックとを融合させたのです。
さて、それから音楽は色々な形で進化を遂げ、48年(!)という時間が経ちました。2019年3月4日の渋谷は雨でした。「HOME」というハコは初めて。この日出演したのは
ylang ylang (イラン・イラン)
happa
macaroom
そして、カナダから来日した
Lief Hall
の4組。お目当ては佐藤潮李ちゃんがVo.を担当するhappaでしたが、もちろん他の出演者...いや、サウンドが気になったのです。
「エレクトロニカ」という音楽は、僕の中では「家で寝そべりながら聞く音楽」というもの。一時レイ・ハラカミにハマった事があったのですが、ライブに行って聞くというのは考えたことがなかった。
だから、こういう機会も悪くはない。ただ誰か連れて行こうと思い立ちました。一人で行ったら心地よくて寝てしまうかもしれませんからね。こういう音楽が好きそうな知人と次女に上の動画のURLを送ったら「行きたい!」って。それで思わぬ組み合わせでの参戦となったのです。
トップバッターの「ylang ylang(イランイラン)」さんは攻守のバランス良かった。
お次のhappaは実はエレクトロニカじゃないんです。すぎもとしょうたろうさんのクラシックギターと佐藤潮李ちゃんのボーカルによるユニット。以前、しおりちゃんのソロライブは見たことがあるのですが、彼女のボーカルがいいんです。happaは初めて見た。しょうたろうさんのギターカッコいいな。
嬉しかったのはくるりの「ばらの花」をカバーしてくれたこと。なぜ僕の大好きな曲を知っているんだろう?
そして、しょうたろうさんのギターソロを聞いているうちに、ようやく気付いたんです。何の偶然かたまたまThe Who「Baba O’ Riley」のシンセのイントロみたいな音になって、「あっ、今日の音楽ってミニマル・ミュージックじゃん!」という事に気付いたんです。
かつて、横浜の屏風ヶ浦に「Uda Uda Cafe」というのがあって、そこでもシンプルな2コードぐらいを繰り返しながら、浮遊感溢れるボーカルを入れている弾き語りミュージシャンが結構出ていた。最近では青葉市子さんなんかそれに近いかな。
その時は全然気づかなかったけど、こういうのって「ミニマル・ミュージック」が変化しながら現代に存在しているんだなぁと感じたわけです。もちろん個々の出演者がそれを意識していると思わなかったけど。
happaのお次はmacaroom。Vo.とシンセとMacのPCでバックの音楽パターンとおまけに背後に投影される映像の処理までやっている。小ユニットではあるけど、膨大な情報量(別にMacのPCの処理能力の話ではなく)を一気に発信してくる感じ。
この日のライブはハコさんから「出演者の許可が取れたら撮影OK」みたいな事を言われたので「いちいち許可取ってられるか」と撮影を控えていたのです。ylang yalangもhappaも撮ってない。
だけどmacaroomのステージの途中で太極拳の演武が入った時に思ったんです。macaroomの音が作り出す「気」が「武」によって攪拌されているな、って。これは面白い撮らなきゃと唯一撮影したのがこれでした。
そして最後はカナダから来日したLief Hallさん。この時点で時計は22時を回ろうとしており、しかも機材のセッティングのトラブルでステージの開始が遅れたのです。ボーカルとリズムボックスとMacとエレクトロ・ハープとドラムスというメカだらけの世界。「おいおい、音リハしてないのかよ」と思いました。
考えてみれば音楽の思想は「ミニマル」なんだけど、装置はそうじゃないんですね。涼しい顔してアンプにプラグを刺すのとは訳が違う。USBだったり変換プラグだったり、なぜかLANケーブルだったり....これが「エレクトロニカ」の難しさかな。
Liefさんのステージは「深淵の闇」という感じ。深く深く闇の中に引きずり込まれてゆきそうな感覚。浮遊しながら吸い込まれてゆく感覚。音楽トリップだと言っちゃえばそうだし、眠いと言えばそう。だってライブ終えたら時計は23時だぜい。知人曰く「最高!」。
というわけで、とりとめないレポになってしまいました。整理すると、この日の表現者たちの「エレクトロニカ」というサウンド....単純なフレーズの繰り返しや少ないコード進行の中から生まれてくる浮遊感とかアンビエント感のある音楽の数々は、そもそも「ミニマル・ミュージック」という1960年代の後半に発生したムーブメントの延長線上にあるってこと。そういう意味じゃThe Whoも同じ線の上にいるってこと。精神は「ミニマル」なんだけど、Macとかでループミュージックを多用すると配線は「マキシマル」になっちゃうということ。こうしたライブを見るなら21時ぐらいまでで、やはり遅くなっちゃう場合はできればベッドの中でリラックスしながら聞きたい、ってこと。以上です。
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