おそうしき
●「礼服」
葬式など12年ぶりだったのだが、さて礼服を着ようと思ったら、太りすぎて着れない。
しかも12年前だからダブルのスーツだ。きっと今の流行りはシングルに違いない。
あわててカラオケ「コート・ダジュール」の隣にある紳士服屋さんに飛び込んだ。
「サイズに合ったシングルの礼服下さい」
「申し訳ございません。お客様のサイズにあったのはダブルしかありません」
結局ダブルの喪服がサイズ違いで2着揃ってしまった。
(礼服は今でもダブルがフツーなんだそうだが、ホンマかいな)
●「お寺」
その寺のことを、僕は幼児の頃から知っていた。
その寺の前を祖父と通るたびに「あそこはヒトダマが出るんだよ」といわれたお寺だった。
まさかね~と思いながらお寺の人に話をしたら、
「当時は土葬でしたから、ヒトダマも出ましたよ。」
●「ロンゲストお経」
お経を聞きながら故人に想いを馳せる。
ひととおり馳せ終わった後なのに、まだお経は続いている。
そこでお経の「意味」をヒヤリングしてみることにする。
ひとおおり意味を聞いたが、まだお経は続いている。
やがて木魚が始まると、職業病なのか指でリズムをとりはじめる。
あわてて指の動きをとめるのだが、まだまだお経は続いている。
こういう時に限って、木魚のリズムにオーバーラップするように、
変なHip-Hopが頭の中に流れてくる。
あわてて頭の中からメロディーを消し去る。
それでもお経は続いている。
そしたら唐突に頭の中に「笑ってはいけない警察」の板尾の嫁の踊りが浮かんだ。
この状況をどうすればいいのだ?
●「お焼香」
順番にお焼香をしてゆく。
ところがウチの親戚ときたら、
みんな作法がまちまちだ。
立った瞬間にお辞儀する人、
お辞儀もせずにスタスタ正面へ行ってお焼香する人、
焼香のあとに遺族席にむかってのみお辞儀する人、
遺族席と来賓席にお辞儀する人、
一同にお辞儀→焼香→一同にお辞儀する人、
いったいどれが正しいのだ?
●「お坊さん」
お坊さんと話をしたのだが、この方、
かつてはカリスマ美容師だったらしい。
●「お香典係」
をまかされた。
「受付の席はあるのですか?」と叔父に尋ねると、
「そのヘンにノート広げて座っていれば、皆持ってくるよ」
そこでそのヘンにノートを広げて座っていたが、誰も持ってこない。
参列者の大半が親族であるのをいいことに、お香典を集金して廻った。
●「懐かしい親戚」
もう25年ぶりに再開した親戚がいた。
僕が子どもの頃によく可愛がってもらった人だ。
僕から切り出した挨拶がこれだ。
「お久しぶりです。すみませんオヤジになっちゃって」
なぜ謝らなければいけないのか、自分にもよくわからない。
●「怖い」
故人の最後の対面のために御棺を空けた時、
8歳の次女は故人の顔に触れた。
するとそのあまりの冷たさに驚き、
思わず「怖い」と言った。
それを聞きつけたのが、僕の従兄弟の4歳になる娘さん。
同じ感性の持ち主がいるのに気づいたのか、
感動の眼差しで娘を見つめ、
その後、二人は急激に仲良くなっていた。
●「お骨」
火葬場の扉が開いて故人のお骨が出てきた瞬間、
次女が今度は「うぉっ」と小さく叫んだ。
あとで理由を聞いたら、火葬場で焼かれた場合、
黒こげになった遺体が出てくると勝手に想像していたらしい。
そんなものを出して、どうするのだ。
●「骨壷」
俗に「喉仏」と呼ばれる第二頚椎の骨が、
完全に残っているのは珍しいと係員の方が言っていた。
体格が大きかったこともあるのだが、
すべてのお骨が骨壷に入りきれず、
最後は無理やり蓋を閉めていた。
長寿の秘訣が骨にあることがわかった。
●「精進料理」
の席で親戚中から僕の仕事について質問攻めにあった。
「これこれこういう形のボイストレーニングの教室です」
などと話しているうちに、勧誘をはじめていた。
涙もあるけど、「クスッ」と笑うこともあったわけで、
祖母らしいといえば、祖母らしい葬式だった。
ディスカッション
コメント一覧
不本意ながら、
そろそろ(心の)準備を始めなくては。。。
おつかれさまです。昔「お葬式」という映画があり、内容は知らないけど、葬式では日常隠されていた面が思わず出てしまうのではないかと。
ちなみに骨壷の話、うちの父とまったく同じだった(父は短命でしたが)。私の知っている人ですが、故人の遺骨が焼かれている間、遠縁の小さな女の子が「チーン、焼けましたよ~」と言っているのを聞いてしまい、笑うのをこらえるのに必死だったそうです。
>こさく
今を大事にしてね。それしかない。
>Stephanさん
状況が状況だけに笑いが増幅されてしまうというのがお葬式ですね。やや関係ありませんが、祖母の葬式の後、皆で記念写真を撮影したのですが、みんな笑顔でいい顔していましたよ。何だかそんなお葬式でした。