スパムメールにみる文章表現

本日現在、スパム(迷惑)メールとの終りなき戦いを一旦中断して、無防備状態で今までの効果を見ているところだ。

僕の家族で4つのメアドを持っているのだが、無防備状態の場合、ひとつあたり1日13通、合計50通以上の迷惑メールに襲われていることがわかった。

こんなに襲われている理由は簡単だ、何年も前に英数5文字程度で作ったメアドばかりだから、ランダムな英数字の組み合わせで機械的に送信されれば、簡単に着弾してしまうのだ。またサイトを運営しているためか、メアド収集ロボットに収集されやすくなっている。さらに個人情報もどこからか流出して、業者間で転売されている可能性が大だ。それに僕のところのプロバイダの迷惑メール対策がお粗末すぎるというのも大きな理由だろう。

そうなんだ。皆さんご存知のとおり最大の防御法は、英数20文字以上の複雑なメアドにしてしまうことだ。

さて、今日はそんな話はどうでもいいわけで、迷惑メールを発信している人間をイメージしてみようという話だ。

以下は昨晩着弾したスパムメールのタイトルだが、ここには共通した「何か」がある。

1:「この問題分かりますか?」
2:「通達したいことが有りまして」
3:「有難う御座います」
4:「宜しくお願い致します」
5:「今からって逢えますか」
6:「いい加減なことなしであったり出来ます?」

それは何かというと、不必要に難解な漢字表現を使っているということだ。

僕だったらこうする
1:「この問題わかりますか?」
2:「お知らせしたいことがありまして」
3:「ありがとうございます」
4:「よろしくお願いいたします」
5:「今からって会えますか?」
6:「マジメにお会いできます?」

1:「この問題分かりますか?」
「分かる」と堅苦しい漢字にする必然性はない。むしろ出会い系のサイトならば、「わかる」という表記にすることで視覚的なソフトさを出した方がいいに決まっている。(もっとも内容はしょうもなさすぎて、ここには書けないが)。そもそも「わかる」を「分かる」と打ってしまうようなことを、今の20代の人はしないのではないだろうか。

2:「通達したいことが有りまして」
2番のケースはもっとヘン。「通達したいことが有りまして」というのは、どうみても役所からの催促状だ。商業サイト(一応そうなのだろう)でターゲットが20代~30代であることを考えるならば、かなり変チクリンなタイトルだ。穿った見方をすれば、堅実なタイトルにすることで、安心感を増そうという狙いなのかもしれないが、むしろ違和感を感じずにはいられない。なお、「あり」を「有り」と変換してしまうのも、古臭い感覚だと思う。

3:「有難う御座います」
3番は注目に値する。「ありがとうございます」を「有難う御座います」と日常的に表記できる世代というものを考えてみよう。少なくとも僕よりは10代は上の世代ではないかと感じる。たとえば僕の場合、ビジネス文書ではまれに「有難う御座います」と表記することもあるが、90%は「ありがとうございます」と表記する。最近は企業のプレスリリースなどにおいでも、ソフトさを表現するためひらがなにすることが多い。わざわざ堅苦しい漢字にしている意図が理解できない。
有難う御座います」の検索結果と
ありがとうございます」の検索結果
を比べてみたらわかると思う。

4:「宜しくお願い致します」
4番も同様で、「よろしく」を「宜しく」にするというのも、僕より上の世代の表現法だ。どこぞかの社長の引退の挨拶ならばまだしも、現代っ子は決してこういう表現を使わないだろう。

5:「今からって逢えますか」
5番は興味深い。「会う」に比べれば「逢う」の方がはるかに文学的だ。「逢う」には「めぐりあう」という意味がある。恋愛では使われる表現だ。これを使ったというのは、文学的表現のつもりなのだろう。それができる人間がつけたタイトルだ。でもしょせん「出会い系」だろ。ゆきずりの「会う」の方がよっぽど現状に即している。

6:「いい加減なことなしであったり出来ます?」
6番は「いい加減」「出来ます」は漢字である必要がない。にもかかわらず、「あったり」という部分では漢字を使用していないというヘンテコな例。「出来る」と表記するのも古臭い。そもそも「いい加減なことなしで」という表現は稚拙すぎる。もう少し表現方法があったのではないだろうか。

7:「よろしかったでしょうか?」
7番に関しては、特によい文面が浮かばなかったが、何だか変な表現だなと感じるばかりだ。「よろしいでしょうか?」で済むところをなぜ過去形にしたのだろう?謎は深まるばかりだ。あえていえば、昭和30年代田園調布あたりでお嬢様が使うような上品な表現になっているといえなくもない。

こうやって読んでいて感じるのは、僕よりは10~20歳は年配の人らしい表現が多いということだ。たいがい僕もオッサンだが、ここまで古風な表現をしろと言われてもなかなかできるものではない。

僕の頭の中にこうしたメールのタイトルを考えている人のイメージがわきおこってくる。

年の頃は50代の男性。70年代安保闘争を駆け抜けて挫折した「全共闘くずれ」だ。学生の頃から岩波の哲学書が好きで、事務所の本棚には黒田寛一の「現代における平和と革命」なんて本も並んでいる。彼の頭の中ではメールの大量送信とはひとつのテロ行為だ。日本中のサーバーに負荷を与え、無差別テロを行うことで、己のカタルシスを感じているにちがいない。

社員は3名程度で、自分の子供ぐらいのエンジニアくずれにメールアドレスの収集やメンテナンスをさせている。迷惑メールの文案は若い社員にまかせて自分は校正を担当している。その理由は顔文字などを入れた文章を打てないからだ。最終的にできあがったメールの文案にタイトルをつけるのは彼だ。それを責任者としての彼の権限だと思っている。

「画竜点睛、タイトルこそが大事なんだぞ」なんて、わけのわからないことを言っている。
「今の若いモンはノンポリでいかん。ノンポリはいけませんよ」なんて酒の席で説教をすることもある。

若い社員はいつも社長のつけたタイトルに違和感を感じている。彼は彼なりに「秋真っ盛り 心温まるめぐりあい」という傑作なタイトル案を持っている。だが、何しろ相手は「全共闘くずれ」だ。死線を越えてきた迫力にゃかなうもんじゃない。しかもクライアントは暴力団ばかりだ。いささか気の弱いエンジニアは色々な意味で萎縮していて、社長のつけたタイトルに従わざるを得ない。

「よし送信ボタンを押せ!」

社長の号令のもと、全国のあわれな一般市民にメールが一斉送信される。
大半はゴミ箱に捨てられしまうが、一部の酔狂な人間によってこのようにネタにされてしまう....

P.S.現実にはこうしたスパムメールの3分の1はドメイン調査Whoisで調べたところソウルから発信されている。
ご苦労な発信者の名前はyoungjoo lee。
いちおー住所と電話番号は
Itaewon 2-dong Yongsan-gu SEOUL
Cheonghwasangga 210-ho, 22
KR(140202)
Tel : 02-749-8675
Fax : 02-749-4554だ。

まあとにかく、人のプライバシーを売り買いしている悪質なスパム業者なのでサラしておく。

コイツはランダムな数字を配したドメインを数十個所持しており(dgyss.comやfdgarh.com)。毎回ドメインを変えて送信してくる。現状では圧倒的に「info」を@マークの前に配したスパムを送信してくるため、infoのついたメールをブロックさえすればOKだ。

韓国のソウルか。道理でヘンな日本語を使うわけだ。こういう場合、外務省にでも抗議したらいいのかな?

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