軍艦島1975 -模型の国-

管理人のたわごと

上大岡の数少ない中古CDショップに"Light On“さんというのがある。
場所はこのあたりなんだけど、幸か不幸かウチの会計事務所の帰り道にあるショップだ。
そのうえ品揃えがかなりツボだ。幅ひろいジャンルが充実している。おまけにインディーズ系もある。「魔ゼルな規犬」のCDだってここにはある。

そんなわけで数字の話をした後には、ここでエサバコあさりをして脳内エクスチェンジをする。
そして「うおっ」と心の中で叫びながら入手したのがコレ。

廃墟マニアの「聖地」とされる長崎の軍艦島(端島)。この地が無人になってわずか1年後に撮影された映像だ。

家で観賞する。余計なナレーションなど一切なく、軍艦島に遺された「生活の痕跡」という鮮烈なイメージ映像の断片が切れ目なしに流れてゆく。

脱ぎ捨てられたサンダル、放置された子供用の車の乗り物、地面に転がる人形の頭(かなりショッキング)、室内に放置されたミシンと仏壇、子供が書いたであろうパーマンの絵、水森亜土のイラスト、小学校の教室にはオルガンが放置され、壁には生徒たちの似顔絵がいまなお掲示されている。そしてパチンコ屋の店内にはこぼれ落ちた玉が散乱している。「あなたの要求を自治体へ!日本社会党」と書かれた張り紙、3時34分で止まった時計、病院に放置された分娩台、そして無人の島に住み続ける犬や猫......一部では建物の崩壊が始まっているが、ガラス窓が全然割れていない建物もある。全く畳が腐食していない建物もある。

わずか25分の映像だというのに物凄い情報量だった。

たしかに1970年代特有のおどろおどろしい雰囲気はある。だけどこの映像の作者は無人となってわずか1年の軍艦島を、単なるノスタルジアとして撮影せずに、あくまでも「置き去りにされてしまった生活の痕跡」として撮影している。

こう思った。「模型の国」というサブタイトルの示すものは、単に人工的に作られた島とその居住区という意味だけではないだろう。
エネルギー政策の転換の中で島の炭鉱が閉山となり、それまで住民が築き上げてきた生活そのものが突然幕となってしまう。人間の生活や営みというものは誰でも安定した基盤の上にあるものではない。時には「模型の国」の御伽噺のようなもので、突然「幕」となってしまうのではないか?そんな1970年代チックなニヒリズムがこの映像作品には感じられた。

話続く。
今から30年前、1980年頃にNHKの科学番組で「軍艦島」を特集したことがある。
僕がこの島を知った最初の番組だった。人間が居住しなくなった鉄筋コンクリートの建物は急激に崩壊してゆくということを軍艦島を素材にして検証した番組だった。
それによれば、コンクリートっていうのは最初はアルカリ性なんだけど、人間が出入りしなくなった建物では空気の入れ替えがないために、次第に中性だか酸性だかへと変化してしまう。そうすると内部の鉄筋が錆びはじめて内部から崩壊してゆく。というようなものだった。
記憶が曖昧だけどだいたいこんな内容だったと思う。
それ以来、いつか行ってみたいと思いつつ30年が経ってしまった。

教室でツアーでもやりますか?

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