“ケーキ投函”第二回公演「変身」 / 井上ともやすライブ 両方へ行ってきた

管理人のたわごと

“ケーキを海底のポストへ投函"第二回公演「変身」 / 大森スポーツセンター

最近は演劇というものに妙に魅力を感じている。
演劇は制約が多い中で自由奔放な空間を作り出す「魔術」を持っているからだ。
それが人間の力によるものだからだ。

むろん音楽にもそういう魔術はある。
あるけども、この21世紀の時代、演劇ほど突拍子もない音が少なくなってしまったのも事実だ。

2月15日、小夜子姫が出演する演劇へ行ってきた。 劇団ユニット名は「ケーキを海底のポストへ投函」 。
名前も突拍子もないが、上演するのは「変身」というもの。

何でも「変身」をテーマにした4つの短編....作者も演出家も異なる....のオムニバスなんだそうだ。場所は大森スポーツセンターの小ホール。

自分には演出がどーだとか、演技がどーだとか、脚本がどーだとかいう視点はない...というか、そういうものを欠落させて観るというのが、自分なりの作法だと思って90分の舞台を拝見した。

幕間にAct3まで上演された寸劇「エリート水道局員の路線バス追跡」は、オーディションに行く事を躊躇するダンサーの女の子と、彼女への告白を躊躇する水道局員の物語。彼女が落とした一枚の「手紙」が二人に変化を即する。「変身」というよりは「変化」ね。

「不思議の国のアリコ」は、アリを収集する少女とミュージシャンのブッ飛んだ物語。おそらくアリの収集は彼女の中では一時的なブームであって、来年には金魚の養殖に変わっているのかもしれない。彼氏だって来年は同じかどうかわからない。

そう、「好き」が沢山ある人間ほど、常に「変化」し続けるというわけ。その大きな「うねり」を神のように微笑みながら見守っているのが二人の住むアパートか何かの「大家さんの娘」。それを小夜子姫が演じるのだけど、三人ともエキセントリックなんだから始末に負えない。

小夜子姫の歌はいいな。
ステージで「My Favorite Thing」のJulie Andrews版を歌うのだけど、彼女はアノ歌をきちんと吸収した上で、自分がどう歌えばいいか知っていた。すげーと思った。

「を、待ちながら」は、一番哲学的といえば哲学的。
揺るぎない信念(ここでは信仰)こそ生きる指針だと考える登場人物と、生きるという事は変化し続ける事だと考える主人公との不毛な論争が延々と続く。どっちも正論なんだからタチが悪い。そもそも揺るがないのも変化するのも「私」なわけだけど、じゃあ「私って誰?」そんな事を色々考えさせられる舞台だった。

「メン・イン・ブック」は、設定が面白かった。
アノ映画のように黒服に身を固めて登場した二人のエージェントは「本の虫」を駆除するのだと、読書好きなアイドルの主人公へそう語る。「本の虫」とは、読書狂の事ではない。本の中にこっそり潜んでいて、影響を受けやすい人間の思考や思想や信念を操る、あの忌々しいヤツだ(三浦綾子や太宰が好きな子は要注意だ)。

自分が思う「変身」の定義は外見的、客観的にみて主体が変化すること。いっぽう「変化」は主体が内面的に変化することだ。90分に4本も5本も舞台が詰まっており、情報量の多さに当惑する事の多い演劇だったが、なにやら深く考えさせられた。

音楽、思想、信仰、文字情報…..それに影響を受けたり感化される事で「私」は変わるけど、それは「変身」なのか「変化」なのか?じゃあそもそも変わる存在である「私」って何なのか?そこに本当に「私」はいるのか?そういう恐ろしい問いかけをこの演劇はしているんじゃないかと思った。

井上ともやすバースデーライブ / 大森「風に吹かれて」

一週間程前、小夜子姫に「土曜の夜に大森くんだりまで出て行って、演劇だけ見て帰るというのも、何だかなぁ」と「明日は帝劇、今日は三越」的な発言をしていたところ、シンガーソングライターの井上ともやす君からバースデーライブのお誘いが入った。何とこれが同じ日に大森駅前のライブハウス「風に吹かれて」!

井上君は、母校である千葉県立国府台高校のフォーク同好会で一期下の後輩。ひょんな事から35年ぶりぐらいに再会したのが2年前の事だった。

ちなみに国府台高校が生んだ三大ミュージシャンというのが僕の中にはあって、ドリカムの中村正人さん、トロンボーン奏者の増井朗人(あきひと)さん、そして井上君だ。

大森「風に吹かれて」

大森の街中を15分ぐらい歩いて「風に吹かれて」へ到着。
もうライブ終了まで40分ちょっとしかないとは覚悟していたけど入場する。思ったよりはるかに会場は広く、50人以上座れそうな席は満員だった。

この日のバンド構成は、ギター、チェロ、フルートというもの。
サウンド構成はケルトミュージックのような感覚すらあった。だけど彼のステージは終始一貫(と言っても6曲ほどしか聞けなかったが)熱いメッセージと思いが伝わってきた。

音楽的には大先輩の彼に、あまり先輩面するのは恐縮だけど、世の中がオフコースとテクノの時代に、部室の隅っこで不貞腐れて時代と違う音楽をかき鳴らしていた彼が、今こうして50人ものお客さんに祝福されながら、自分の音楽をプレイしている。その事に感動した。

ライブ終了後、高校の先輩方にお会いする。あの高校は不思議な学校で、自由な校風もあってか、型にはまらないような一癖も二癖もある人たちを沢山送り出した学校だった。そういう空気に包まれた、プチOB会となった。

それにしても大森で二つも予定が合わさるなんて、何て偶然なんだろうラッキーと思っていたわけだが....どうも翌々日のニュースによると、ライブハウス真裏の病院関係者が、翌16日新型コロナウイルスに感染した事が確認され、17日から病院自体が休診になったようだ。

まあ、建物の表裏で感染してたら世話ないし、そもそも医師は「蒲田分院勤務」との事。

でも、こうなってくると何がなんだかわかりゃあしない。現状では東京も神奈川もどこもへったくれもセーフティーな場所なんてない。どんな方程式も成り立たず、感染する時は感染するし、しない時はしないとしか考えようがない。

「こりゃあ場合によっては事だぞ」と思うわけだけど、現時点では花粉症の症状ばかりで熱もなければ倦怠感もないのだから、困ったものだ。

それにしても「風に吹かれて」は言い得て妙だ。

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