労働保険とかブリル・ビルディングとかモッズとか

管理人のたわごと

僕のような中小企業の経営者が年に一回頭を悩ませることといえば、言うまでもなく「労働保険・一般拠出金申告書」の作成だ。

通称「緑の封筒」と言われているのだけど、これが届くと顔は真っ青になる。
封筒には「至急開封してください」と書いてあるけど、精神的にサボタージュ….いや現実逃避しようとし、いつも7月10日の提出期限ギリギリになって開封する。ハイすいませんね。そして頭がこんがらかるような計算のすえ、支払金額を確定させる。
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一年に一回のことだから、なかなかやり方を覚えられない。そのくせ中途半端なレベルではあるものの、何とかこなしてきたものだから、まだまだ社労士さんに任せるほどにはならない(それほどのスタッフ数にもなっていないというのもある)。これが終わるたびに今使っている給与計算用のEXCELシート(笑)をもう少し申告が楽になるように作り直そうと思うのだけど「喉元過ぎればなんとやら」で、抜本的な改定に至っていない。

僕の知り合いの経営者の中にはこの緑の封筒を「パズルを解くように楽しい」と言って取り組んでいる人がいる。もはや尊敬に値する発言だ。しょせん僕は右脳人間なんだろう。数字の洪水には溺死するしかない。

7月9日、申告書が完成したので関内にある「神奈川労働局」へ。フツーは銀行でお金を振り込んで、申告書の方は郵送してもいいのだけど、そんな器用な真似をする自信もないので、書類のチェックも兼ねて参上する。

期日直前なのでさぞかし混雑しているだろうと思いきや(実際、マニュアルにもそう書かれている)、
わずか2人待ちで拍子抜けした。そう言えば昨年もこんな感じだったことを思い出す。

対応の係員に申告書を提出すると、神業の速さでパッパッと計算し、あっさり「はいOKです」と言われた。
思わずガッツポーズを取ってしまう自分が情けなかった。実はこの直前に蒔田にある年金事務所で「算定基礎届」にダメ出しされたので(交通費を月割りにするかしないかという計算の仕方の勘違いなのだけど、果たして来年まで覚えているかどうか….)、なおさら嬉しかった。

労働局を出ると、足は自然と馬車道のdiskunionへと向かう。いや法務局でも労働基準監督署でもハローワークでも足は自然とここに向かう。そういえばThe Whoの「Quadrophenia -Live In London-」出ていたな、別に輸入盤でいいや。ついでにご褒美に何か面白いモノがあったら買おうと、そんなことを考えながら足取りも軽くなる。

そんなわけで「自分へのご褒美」と勝手に言わんばかりの収穫は以下のとおり。
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「The Songs of Carole King」(¥1.242)
ある音楽があるとすれば、そこには必ずその曲を書いた人がいる。
歌手そのものを好きで聞いているうちはいいけど、作曲家くくりで横断的に音楽を聞き出すとマニアの領域に一歩足を踏み込んだことになる。ビートルズのジョンもポールも若い頃からそういう聞き方をしていたようで、そんな彼らがリスペクトしていたのが「ゴフィン=キング」というアメリカの作詞作曲コンビだった。先日亡くなったゲリー・ゴフィン(作詞)とキャロル・キング(作曲)は、1950年代後半からビートルズが席巻するまでの期間に、アメリカのポップミュージックを潤した二人で、全米ビルボードチャートに「Will You Love Me Tomorrow」「The Loco-Motion」という2曲の一位曲を送り込んでいる。このCDは「つづれおり」でシンガー・ソングライターとして有名になるよりもずっと前の「裏方時代」「ティーンエイジ・アイドル時代」のキャロルをまとめたコンピレーション。全然売れなかった1958年から1962年にかけてのソロシングル(11曲)にプラスして、他アーチストに提供していた楽曲が3枚組に74曲コンパイルされている。

「It Might as Well Rain Until September (1962) by Carole King」
実際のところ、この時代のキャロルに関しては他人に提供した楽曲を断片的に知っている程度で、彼女自身が歌っていた作品はこの傑作「It Might as Well Rain Until September」しか知らなかった。

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「The Songs of Bacharach & David」(¥864)
横浜へ越してきてすぐのことだったから1971年のことだろう。普段はクラシックしか聞かなかった親父が、バート・バカラックの作曲した作品をコンパイルしたレコードを買ってきた。当時の僕はまだ6歳になるかならないかの幼稚園児だったけど、なぜかこのレコードに収録されていたBJトーマスの「雨にぬれても」は知っていた。今でもその理由はわからない。家でFMラジオを流しっぱなしにしていたお袋の影響だったかもしれないし、それだけこの曲が流行っていたんだと思う。2014年の日本でどんな幼児でも「Let it Go」を知っているのと一緒だろう。その曲が英語か日本語かなんて6歳児には関係なかった。子供心にいい曲だと思っていたし、この曲がいつでも聞けるのが嬉しかったのを覚えている。ほぼリアルタイムで聞いた記憶に残る最初の洋楽がこの「雨にぬれても」だった。

「Raindrops Keep Fallin’ on My Head (1969) by B.J.Thomas」
キャロル・キングと状況は一緒だ。バート・バカラックも作詞家のハル・デヴィッドをコンビを組み、1950年代終わりから「ブリル・ビルディング・サウンド・シーン」の凄腕作曲家として活躍していた。これは1956-1962年にかけての提供作品50曲をコンパイルした2枚組。すでに持っている「The Definitive Burt Bacharach Songbook」(こちらには「雨にぬれても」が収録されている)とあわせて、親父以上にバカラック・サウンドを集めてしまったことになる。

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「In The Beginning: The Mod Story」(¥864)
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「The Roots of Northern Soul: 40 Original Classics」(¥864)
僕の好きなThe Whoといえば1960年代にイギリスで流行した「戦後派」によるライフスタイルに至る潮流「モッズ」を思い出す人も多いはずだ。でも彼らは「モッズに仕立て上げられたバンド」であって必ずしも「モッズが結成したバンド」じゃなかった。でもその精神とか思想とかいったものはモッズと常にあったし、今でもそれは変わらない。またモッズの連中が好んで聞いたR&BやソウルミュージックはThe Whoの重要な音楽的ルーツになっている。

「I wonder if your love will ever (1961) by Pentagons」
この2枚はそんなモッズが好んで聞いた音楽をコンパイルしたもの。最近「モッズが影響を受けたシリーズ」というのは何タイトルもリリースされているけど、この2タイトルはなかなかいい。前者は2枚組50曲、後者は2枚組40曲が収録されている。この2つのアルバムは重複しているアーチストも多いけど、あえて言えば前者が「R&B系」、後者は「Soul系」ということになりそうだ。どちらかといえばポップだけどディープ感漂う後者が僕の好みだ。

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「Back Beat: Singles From The Island Vaults 1962」(¥1,242)
1970年代のレゲエよりも、その音楽的なルーツである1960年代以前のスカの方が好きだ。音は悪いしレゲエほどサウンドは洗練されていない。だけどそのサウンドの中にジャマイカのストリートのような喧噪を感じるし(行ったことはないけど)、モノラルに詰め込まれた音の中から現地ミュージシャンたちの「したたかさ」「貪欲さ」「危険さ」を感じてしまうからだ。

「Forward March (1962) by Derrick Morgan」
ジャマイカのレーベル「アイランド」の創生期をコンパイルした3枚組54曲。1962年にこのレーベルからリリースされたシングルのAB面が網羅されている。スカのオンパレードで御大ジミー・クリフのデビュー曲「ハリケーン。ハッティ」も収録されていた。

とまあ、ここまで買って268曲で5,076円。安いっ!
実はこれらは「Not New Music」というCDレーベルからリリースされているアルバムなんだけど、単純に「安い」という理由でも涙が出るし、以前高い値段で買ったCDが激安になっているという理由でも涙が出るし、以前ハマっていた時代の音楽がデフレを起こしているんだという現実にも涙が出てしまうのである。

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