四代目となる自作PC「WHOS-NEXT」

備忘録的メモ

「映像の編集なんて最高の贅沢ですよ」。
今から24年前(1999年)、京都寺町通にあったPCショップの店員さんに言われた言葉だ。
当時、PCを自作で作って、映像を編集するという事を本気で考えていた頃だった。
理由は「親バカ」だ。2歳の長女、3月に産まれたばかりの次女、7月に購入したデジタルビデオカメラ。
こういうものが人を突き動かす。

この時、自作をしなかったのはSONYからVAIO PCV-R71 TV7が発売されたからだった。
1999年10月2日に発売されたこのマシン、定価43万という途轍もない価格だった。
正月を超えて38万まで値下がりしたトコロで、西院のジョーシンで購入した。

当時は京都の帷子ノ辻でCDショップの店長をしており、妻子を抱えて家賃を払う身。
とてもとてもそんな贅沢をできる家計ではなかった。だけど前の会社で得た貯金を切り崩しての購入だった。

実際にVAIOで動画編集をすると、ビデオCD規格で5分の映像をエンコードするのに5時間~12時間を要した。
ビデオCD規格とは解像度が352×240ピクセルで、計算が正しければビットレートは1.12Mbpsだった。
そう、当時の40万PCは現代のスマホ以下の性能しかなかったのだ。

それでもこのPCを使って多くの事を学んだ。
動画編集、ホームページ制作、音楽管理、そしてヤフオクで出費を回収しまくった。
今思うと完全にモトが取れてお釣りが来るぐらいの恩恵のあったPCだった。

それから5年後、今の仕事でライブを撮影する機会が増え、必要に迫られて動画を編集する事になった。
そうすると既成のPCでは心許ない。PCも自作する必要が出てきた。
背中を押してくれたのは、生徒で自作マニアのSさんだった。
それから3台のPCを作ってきた。

2006年4月 VU(ビュー):初代自作PC
2011年10月 松平ケメ子 二代目
2017年8月 QUADROPHENIA 三代目

これ以外にも会社のPCや父のPCを作ったり改造したりを続けてきたから、6台~7台は作ったかもしれない。
自作のメリットはメンテナンスで延命したりアメーバーのように増殖できる事だと思う。
何よりも自由だ。

初代はフルハイビジョン(フルHD)動画を取り込んだだけでフリーズした。

VU

二代目の「松平ケメ子」は30分のフルHD動画をエンコードするのに60分を要した。
ライブを終えて、動画編集の最中にぶっ壊れるという最悪のご臨終パターンをしてくれたマシンだった。

急遽自作した三代目は30分のフルHDを20分~25分ぐらいでエンコードするというマシンだった。

QUADROPHENIA

昨年末、今まで撮影に使っていたビデオカメラ(Panasonic HDC-TM700)がついにご臨終を迎えた。
4Kのビデオカメラの購入も検討したが、現実にはメディアの壁という「ボトルネック」がある。
僕の撮影するライブ映像は4時間程度の事が多く、Blu-rayの片面二層(50G)に収まる事は避けて通れない。

色々調べてみると4Kのビデオ映像をストレスなく編集できるマシンを作るには、50万円以上投資しないと不可能という結論となった。
「ストレスなく」とは30分の動画のエンコードを半分以下の速度で編集できることだ。

そこで中古でも最高の画質でフルハイビジョン撮影が可能なカメラを探したのが今年の1月だった。
新品同様のSONYのHDR-CX900を驚くほど安い値段で落札できたのはラッキーだったとしか言いようがない。
2014年に発売され、今でも業務用としても使われているビデオカメラで、状態によってはプレミアム価格がつく事もある。
このカメラには「XAVC S HD」モードというのがあって画素数は1.920×1.080、ビットレートは50.Mbps。
メディアに映像を収める立場としては、充分すぎるぐらいのカメラだ。

中国との価格競争が続く中で、様々なコストカットが行われ、4Kビデオカメラに移行してしまった今としては、
このクオリティのカメラはなかなか商業ベースに乗せる事は難しいようだ。

SONY HDR-CX900

当然、現状のPCではどのぐらいエンコード時間がかかるかわからない。
ちょうど昨年9月に横須賀に事業所が増え、そちらにもPCを一台設置する必要があったので、これを機に動画編集用のPCを一台作る事にした。

制作前のパーツたち


2023年3月 WHOS-NEXT 四代目
CPU Intel Core i7 13700K BOX ソケット:LGA 1700 チップセット:Z790, Z690
マザボ ASUS PRIME Z790-P D4-CSM M.2×3, SATA×4
グラボ MSI GeForce GTX 1660 SUPER AERO ITX OC [PCIExp 6GB] NVIDIA GeForce GTX1660Super (179x 27x42mm)
メモリ Corsair CMK32GX4M2A2666C16 32GB 16G×2(DDR4)
Cドライブ WD_Black SN850X NVMe SSD WDS100T2X0E 1tb M.2 (Type2280)→OSとソフトウェア専用ドライブ
Dドライブ WD_Black SN850X NVMe SSD WDS100T2X0E 1tb M.2 (Type2280)→マイドキュメント専用ドライブと動画編集用ドライブ
Eドライブ WD Blue SATA SSD 内蔵 4TB 2.5インチ 4TB (2.5inch)→音楽ファイル格納庫
Fドライブ WD80EAZZ 8TB (3.5inch)→動画格納庫
Gドライブ WD80EAZZ 8TB (3.5inch)→画像格納庫
光学ドライブ BDR-212BK バルク BD対応 (5.5inch)
CPUファン Owltech SC200V2
Wi-Fi内臓カード(Blutooth) TP-Link Archer TX50E Wi-Fi子機, Blutooth子機
PCケース Fractal Design Pop Air RGB TG FD-C-POR1A-06 ミドルタワー cpuファン全高185mm
OS Windows 10 DSP版
ディスプレイ Acer NITRO XV240YPbmiiprfx
電源 玄人志向 KRPW-GA850W/90+

世界的な半導体不足で予想以上に費用もかかったし、その分妥協せざるを得ない部分もあったけど、完成。
ドライブを使用目的にあわせて分離するというのは、メンテしやすいから。

WHO’S NEXT

エンコード速度だけど、編集した30分のフルHD動画をエンコードするのに1分30秒という感動的な速度だった。
試しに4Kの3分20秒の動画をエンコードしてみたら1分45秒という数字が出てきた。想像していた以上にゆける。
個人的には一番使用頻度の高い音楽ドライブをSSDにした事で、滅茶苦茶作業が楽になった。

ぶっちゃけPC自作なんてもう流行ってないようだ。
秋葉原にあったパーツ屋さんも随分閉店し(いやこれはネット販売に移行しているのかな)、現実的にはこれだけタブレット端末が普及して、動画だってYoutubeで販売できる時代だ。いま自作を後押ししているのはゲーマーと僕のような動画編集者ぐらいだと思う。

いつも「これが最後の自作だ」って思いながらPCを作るわけだけど、今から5年後、いや6年後かな...M.2とSDDで固めたマシンを作る自分がいそうで怖い。

Cinebenchを利用したベンチマークテストの結果(CPUマルチ)

Cinebenchを利用したベンチマークテストの結果(CPUシングル)