国道477号 百井別れ
まだまだ京都の話。
京都のお寺参拝において、その遠さから難易度レベルが極めて高いのが花背の峰定寺(ぶじょうじ)。ここへ行くには鞍馬からさらに山奥へ20kmを進まなくてはいけない。
鬱蒼とした北山杉の林の中京都府道38号を進む。地盤が甘いせいか所々で杉の木が倒れている、中には府道に倒れた杉を通行の邪魔にならないようにチェンソーで切断したようなのもある。
花粉症にはならないものの、雨の日などはここを走るだけでもスリル満点だろう。
そんな中、鞍馬から4kmも走ったところに、国道、いや「酷道マニア」の間では有名な「百井別れ」がある。
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なぜここが有名なのか?標識を見るとわかるとおり、右側の百井方面から来た国道477号は、ここで鋭角に折れ曲がって、いま来た府道38号の延長線上を美山・京北方面へと進んでゆく(鞍馬方面から見た場合)。
その進行角度はあまりにも急で、矢印のように美山・京北方面から百井方面に入る場合、車の場合は一・二度は切り返さないと進行できない。
国道といえば道路としての地位は県道や府道なんかより上なわけだけど、そんな天下の国道を進行するのに切り返しが必要だということ、このことが「百井別れ」を有名な「酷道」スポットにしている。
上の標識に「百井方面、復員狭小・路肩弱し」となっている。
つまり「これは国が管理している道路ですが、路肩崩壊で転落する危険がありますよ」と言い切っているようなもんだ。よっぽど「安全です」と言い切ってきた原発より正直だ。
そもそも国道477号全体がとんでもない道だ。近畿最長の国道という栄冠とは裏腹に、どんな「酷道」サイトでもこのルートの酷さが紹介されている。
たとえば僕もかつて三重県の鈴鹿山脈を477号で越えたことがあるけど、相次ぐ豪雨による土砂崩れなどによって2011年5月現在通行止となっている。また4年ほど前に京北町から八木町まで477号を走ったことがあるけど、「国道だ」とタカをくくって入って行ったら、離合困難な一車線の道に閉口したことがあった。愛すべき道ではあるけど、決してオススメはしない。
そんな「百井別れ」右手の闇の先には....酷道477号最大の難所、百井越えが待っている。
この百井峠越のルートがどんなに恐ろしいかは、上記標識以外にも「大型車両通行禁止 路肩崩壊の恐れあり」というこの看板がもの語っている。この分岐点から覗き込んでも、何やら危なっかしい道が、うねうねと杉林の陰へと消えていっている。Google Mapの撮影車ですら、この先をスルーしている。対向車が来ないことを祈りつつ進入したいという誘惑にとらわれる。
この先を走行した人のレポートは「百井越え」でググればいくらでもある。死の危険を感じながら走る国道。国家は保証も補償もしてくれない。本来我々は自己責任で自分の道を進まなきゃいけないことを改めて思い知らされる瞬間ではある(かなり大袈裟)。
そんな百井越えに運良く成功すれば、大原の少し先、古知谷(こちだに)の里に出ることができるようだ。
ここはのどかな里なんだけど、かつて矢追純一のUFO番組で宇宙人が出現したことで有名になったことがある。京都という所はどこまで行ってもワンダーランドだ。
(全く民家の気配がないのに、バス停があるから不思議。ここで雨の夜にバスを待っている人がいるとすればそれは…..)
幸いなことに、僕の行く先は峰定寺だ。右方向への危険な誘惑にとらわれずに迷わず直進する。直進の道も国道とは思えないような急カーブの連続だ。対向車に注意しながら進行する。途中で国土交通省の車が道路のメンテをしていたから、やはりこの道は国道に間違いないないのだろう。
こんな緊張感のある道で、BGMが相対性理論だった。「LOVEずっきゅん 」とか歌われてもどうしようもない。
花背(はなせ)峠を越えると、視界が一気に広がって花背の里に出た。
文字通り花が咲き乱れる鄙びた村落。
京都の里山の風景は実に美しいのだけど、この里は格別だった。
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