結局捨てられなかったもの

管理人のたわごと

僕という人間は元来モノを捨てることのできない人間のようだ。過去に12回も引っ越しを経験していながら、後生大事に色々な「モノ」と旅をしてきた。

だけど今回の自宅の引っ越しでは「脳内革命でも起きたんじゃないか」と思われる位、かなり大胆にモノを処分しまくった。
あれだけあったレーザーディスクもたった1枚を残して処分したし、なんとなく自分的には「禁断の領域」だったアナログレコードも3分の2を処分した。
CDショップで働いていた時、常に仕事のパートナーだったワープロ(今では印刷もできなければフロッピードライブも動かない)もついに処分したし、段ボール数箱分の本も処分した。

人間というものは不思議なもので、今まで使いもしないのに後生大事に持ってきたものでも、一旦タガが外れると節操なく捨ててゆけるものだから恐ろしい。
そのタガが外れるのが個人だったらまだいい。だけどそれが集団だったらそりゃあもう大変だ。第二次世界大戦中のナチスドイツもこんな感じだったに違いない。
自分自身「これはモノに対するファシズムだ」とか思いつつ、大胆に処分を続けていった。

自宅の引っ越しも一段落したので、旧宅に残置してきた家具を処分することにした。
横浜市で粗大ごみを処分するのに、一番手っ取り早いのは日野にある「港南ストックヤード」に直接持ち込んでしまうことだ。
事前に受付センターに電話をして、どんな家具を捨てるかを説明し処分料金を教えてもらう。あとは途中のコンビニで処分手数料のシールを購入すればいい。
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蒸し暑い一日だったけど電動ドリルで家具を解体して、車にガンガン詰め込んでいった。
新婚記念に購入したダイニング・テーブルも(現在は椅子だけが教室で植木鉢の台として使われている)、小学生の時に使っていた本棚も、居候野良猫のクーちゃんの爪とぎに使われてボロボロになったソファも、今となっては大型すぎるテレビ台も、日常的に存在感が希薄だったレンジ台も、15年ほど前に仕事が忙しくて制作途中のままだったところを子供から波状攻撃を受けて手痛い損害を被ったニチモのプラモデル「戦艦大和1/200スケール」も、あのダメ映画より前に買ったにもかかわらず、これまた制作途中で子供氷山に衝突し海底の藻屑寸前になっていた「R.M.S.TITANIC 1/400」のプラモデルも、バブル期にユーミンを聞きながら竜王やら何やらでえっちらほっちら滑ったスキー板も、新たにIKEAの本棚に買い替えてお役御免となったスチール本棚も、教室で長年使われた後に我が家に天下りしていたFAX機もすべて処分した。
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(車で港南ストックヤードまで通算6往復はしたと思う)

ファシズムをやっておきながら、後で憑き物が落ちたように後悔するのが人類の常だ。
御多分にもれず僕の心も大変痛んだ。
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とりわけ40年にわたって我が家にあった本棚は(今でこそ使い勝手の悪い物だったけど)、港南ストックヤードで別れる時は「お疲れ様」を言わずにはいられなかった。
付喪神(つくもがみ=昔の人は長く使われた道具には神が宿ったり妖怪になったりすると考えた)信仰ってヤツを、これほどリアリティをもって感じたことはなかった。

ところが、旧宅に戻って、ガランとした部屋を掃除していたら、天袋の中からこれが出てきた。
Led Zeppelin
(LED ZEPPELINの木製パネル)
内心「でっ、出たぁ~」と叫んだ。「浮かんで下さい、浮かんで下さい」とも思った。

そう思ったのには理由がある。デカいクセに捨てられない逸品だからだ。
何しろ幅1m、高さ80cmはあるというシロモノだ。置き場所に困って天袋にしまってきたのもそういう理由に他ならない。

捨てられないのは単に「レッドツェッペリンのかなり貴重なパネル」という理由だけではない。
これは京都で営業をやっていた時代に、客先の乳製品&業務用食品卸店の部長サンから頂いたものだった。
この会社、弊社担当者が二人も亡くなったといういわくつきのHARD ROCKな会社だった。
若かった僕はとにかくアクティブに営業をしていたのだけど、この部長さんとレッド・ツッェッペリン好きということで意気投合し、おかげで命拾いしたのである。

(1972年10月10日の京都会館ライブ。部長はこの時のことを「あれは忘れられへん。いきなり"ROCK’N ROLL"から始まったんや。脳天を一撃されたわ」と僕に話してくれた)

これは、僕の人生の「勲章」だ(それにしては存在すら忘れていたけれど)。
さて、どこに置いたものやら...
LED ZEPPELIN
とどのつまり、いつなんどき落下して脳天を一撃するかわからないという"Rock’N Roll"的スリル感を漂わせながら、本棚の上に鎮座したのでありました。

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