アンデスとの国境を越えた戦い -上大岡駅前ストリート・ライブ Part.2-

ライブレポ

先週の土曜日の話。
またもや上大岡の歩道をえっちらほっちらアヤシゲなものを抱えたオッサン連中がゆく。
アヤシゲなものはRolandのポータブルPAのBA-330が2台。そしてYAMAHAのキーボードが1台、ギターが3台。またもやゲリラ的に駅前でストリートライブをやろうってわけだ。

この日、我々が心配していたのは"アンデス"の存在。
民族衣装を身にまとい、フォルクローレ系の楽器を演奏しつつ2,500円のCDを販売し、民族的なアクセサリーを販売している方々のことを、我々は"アンデス"と呼ぶ。
その方々のステージ一曲目はなぜか「コンドルは飛んでゆく」で始まるのがお約束だ。
ペルー系の方々ではないかと勝手に推定しているが、真相は不明。

この方々が一番いい場所を占拠しているんではないかと心配していた我々は、前日のメールでも「アンデスがいないことを祈りましょう」と語り合っていたのだった。

悪い予感は的中した。
改札口付近の一番良い場所はすでにアンデスのものだった。
しかもホンの10分前に来たことは明らかだった。一同「アンデスにやられた」と悔しがる。

仕方がないので場所を移動する。
50mほど離れた場所でプレイすることにする。集客力では劣るがやむを得ない。
まずはお約束の自転車整理。そしてまたもやこんな広大な演奏スペースを作った。

自転車はギュウギュウに並べると占有スペースは2分の1になっちゃうわけで、ここはすべて自転車で埋め尽くされていたのだから、まあ演奏ぐらいはしてもいいでしょう、という勝手な理屈ですみません。

まずはカカ王さん。

ここへ来てからさだが再び思う存分歌えるようになった」カカ王さん。
今日もさだまさし中心の選曲でゆく。

僕は「主人公」と「檸檬」でキーボードとして参加させて頂いた。X’mas Partyでもコラボした「主人公」はともかくとして「檸檬」は「今さっきあわせたばかり」なんだからもう無茶苦茶だ。でもこのイージーさがストリートの良さなんだろう。考えて見れば僕自身ストリートで楽器を鳴らすのはこれが始めてだった。つまりこれって僕にとっては「ストリートデビュー」ということになる。でも本当のデビューはギター弾きながら歌うようになるまで取っておこうと思う。SPI66で路上に出るにはもうちょいお待ちくださいませ。

お次はキタさん。オリジナル中心の選曲。

前回は仕事が入ってしまったため、来れなかったけども、今日はしっかり30分....と思いきや、「あまりの寒さ」に4曲でオシマイ。この時点ではまだポカポカしていたのだけど、キタさんはとても寒がりだということがよくわかった。

と、さっきからアンデスがうるさくて仕方がない。もっともコチラもうるさいわけだけどね。
アンデスはメロオケにあわせてケーナ(?)を1曲吹くと、あとはずっとCDを流すというのの繰り返し。自分でケーナを吹くのは1時間に一回ぐらいのようだ。CD楽曲の楽器編成やアレンジは確かにフォルクローレだけど、演奏されている曲は「My Heart Will Go On」とかで全然民族音楽じゃない。こんなのストリートライブではなく単なる「物販」だ。ところがさっきから見ていると、CDが2~3枚は売れているから凄い。30分一生懸命歌ってCDが1枚売れたらラッキーだというご時世に、アンデスは1時間に1曲でCD売っているわけだから大したものだ。もっとも我々は売るCDもないわけだけどね。

さてさてお次はヌッキー@リュウちゃん

今日もまたナガブチ中心で...というかナガブチだけで攻める。
しかも今までにないレパートリーが物凄く増えていた。イマージュのバザーで入手した「Complete 長渕剛」が役に立ったのかもしれない。何と言っても地元だけに「あら竜太郎さんじゃないですか」という「こんなところで何やっているの?」的な反応があったのが面白かった。あとは奥様もずっと見てくれていた。僕のカミさんなんか絶対来ないだろうな。うらやましい限りである。

この日は2回公演で、再び同じローテーションをやったのだが、太陽がビルの陰に入ってくると、極めて寒くなってきた。前回は改札口前だったので、まだ風除けになったのだが、今回はシャレにならない位温度が下がってきている。だから2度目はそうそうに退散するような形となった。

さて、アンデス。
アンデスはさっきから後ろを向いてACアダプターを修理していたのだが、それが直ったようで、ガンガンCDを流し始めた。それが本当にうるさくてたまらない。2度目のリュウちゃんのステージの途中だったか、あまりにもやかましいのに腹を立てたリュウちゃん、「ムネさん、ちょっとギターを持っていて」と僕に渡すと、いきなりアンデスの方へと強い歩調で進んでいった。
「おっ、いよいよ日ペル戦争勃発か?」と思ってヒヤヒヤしながら遠目に見ていたら、アンデスがCDのボリュームを落とした。満足げに戻ってきて再びプレイを開始したリュウちゃんだった。

後で「あの時は何て言ったんですか?」と尋ねたら、
「あと5分で終えるから、その間は静かにして下さい」と言ったんだそうだ。
これは武士の名言だな、と思った。

そんなわけで、寒い中、2度目のStreet Liveは無事終了したのだった。

最後に....どうでもいいことだが、アンデスについて想像してみた。

よく「彼らは日本中をツアーしていて、あちこちの駅頭で歌っている、5人ぐらいでプレイすることもあれば、メンバー1人でプレイすることもある」。と考えている方もいるようだが、おそらくアンデスは20グループ以上はいると推定している。彼らは「アンデサー」という総元締めの下で動いていて、アンデサーからCDや民族アクセサリーなどを60%ぐらいの値段で仕入れて、駅頭で販売している。そうやって実際に販売や演奏に従事する「アンデス」のことを専門用語で「アンデシー」と言う。
最初は5人ぐらいのグループで演奏して廻る。資金力がついてくるとガソリン駆動の発電機やPAやミキサーやCDプレイヤーを購入してひとり立ちをする。そうなると演奏するの1時間に1曲、あとはCDを流しているだけでも商品は売れてゆくために仕事は楽になる。その上利益は自分で占有できる。貯金がたまったら、むろんペルーに帰るのだ。愛する家族がいる母国へと。

アンデスの山中にあるとある小さな村。ヤギが繋がれた家に、ある日パパが帰ってくる。町から牛車にひかせて積んできた荷物の中には、日本からのお土産でRolandのBA-330.......

食べてゆくために歌うアンデスと、表現をするために歌う我々。
どちらに勝ちも負けもないというのが、今日のオチである。

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