大船ラドン温泉
疲れました旅に出ますと書置きを残し、カミさんと二人で向かったのは栄区の田谷にある大船ラドン温泉。家から車でわずか15分の旅だった。
「ラドン」というネーミングで「怪獣ラドン」を思い出すのは、正常な40代以上の反応だ。福岡の町を滅茶苦茶にしてしまった「空の大怪獣ラドン(昭和31年)」となると記憶も危ういが、「怪獣大戦争(昭和40年)」ならばTVでも頻繁に再放送されていた。勇壮な「怪獣大戦争マーチ」や、水野久美演じる「X星人」の妖艶な魅力が、いまだに強烈な記憶として残っている。
一方コチラの「ラドン」は「原子番号86の元素」なんだそうだけど、これに「大船」と「温泉」という単語がついた瞬間から、「大怪獣ラドン」と似た匂いがただよいだす。むろんそれは「昭和」の匂いに他ならない。
さて、このラドン温泉では、毎月大広間でカラオケ大会が行われている。審査員によって選考を行い、各月上位に残った者が半年に一回行われるグランドチャンピオン大会に出場する。今日はその大会の日。これにカミムが出場、その応援にかこつけていまだ体験したことのない異次元の世界を体感してみようと思ったのだ。
受付で入場券を購入、館内着を「ムームー」か「甚平」か「浴衣」か選ぶ。
とりあえず大会開始までわずかなので、私服のまま大広間へ。
大広間の食事は値段もリーズナブル。さっそく昼食を注文し、食べながら鑑賞することにする。
高らかなファンファーレとともに幕が上がり、いよいよ大会が始まった。
300人以上収容可能な大広間はおじいさんとおばあさんばかり。
みんな思い思いの姿勢でチャンピオン大会を見ている....でもなし、見ていないでもなし....
僕の正面にいた人なんぞはこのように寝転がって大会を見ていた。大会終了後、審査員をされていた演歌歌手が歌ったのだけど、静かに鑑賞している人なんかひと握りで、終始大広間はザワついていた。
ああそうか、ここは「健康ランド」なんだ。
カラオケ大会はあくまでも付帯的なイベントであって、あくまでもここはくつろぐ場所なんだな....
3名の審査員のうち、ひとりはここにお酒を納入しているビールメーカーの若手営業マンのようで、特に音楽にどうのこうのという方ではないようだ。だから逆に言うと、この人の反応というのが一番シビアだったかもしれない。この人が乗り出すように見ていた出場者は、必ず力量のある人だった。これは大広間でくつろいでいる人たちにも言える。そう、実は大変シビアな音楽環境なのだ。
おそらく●●ビール横浜営業所の「大船ラドン温泉」担当なんだろう。土曜出勤して大会審査で2時間ほど働き、そのあとゆっくり温泉につかって帰るに違いない。上司からは「お前、明日はラドン行きか?羨ましいなぁ」と冷やかされているに違いない。この6月は寒かったから内心は月次予算達成のためにヒヤヒヤしているかもしれない。「大船ラドン温泉カラオケ大会協賛の件」という拡売計画書を作成して「表記の件、下記のように協賛致し度、申請致します」的な書類を書いているに違いない....同じような食品メーカー出身の僕とカミさんは、あれやこれやと想像を巡らせて盛り上がっていた。
いっぽう熱心に審査を続けるお二人の演歌歌手だが、ボイトレ的な評価ではなく「節回し」を重視した評価だった。出場者が全員「ド演歌」一色の中で、唯一J-POP...といっても30年以上前の歌を歌ったカミムの評価もそれに準じていた(カミムは惜しくも落選)。
大会が終了し、どっぷりお風呂につかりにゆく。とてもいい湯。肌がスベスベになる(なる必要もないのだが)。滝の見える露天風呂もナイスだった。この1ヶ月というもの、なんだかアレやコレやと忙しかった自分にとって、ひと息入れるには絶好のタイミングだった。来月もどうせバタバタすんだろうけど、この瞬間がまた来月へのバネになることだろう。
ところで、サウナに入ったら、刺青の方と我慢比べ大会になってしまった、フツーなら1時間程度で出てくるところを、1時間20分ぐらい入っていたかもしれない。
風呂を上がって甚平に着替えると、また大広間に戻って、コーヒー牛乳をグビーっと飲む。人生で最上の幸せのひとつだ。大会が終われば、大ステージはフリータイム。210円払えば誰でもこのステージでカラオケが歌えるんだそうだ。また、このように楽曲にあわせて踊っている人たちもいた。
この「ラドン・ダンシング・チーム」の成立過程は不明だけど、ほぼ「大船ラドン文化」が確立された時期と一致するはずだ。この方たち、自分たちの踊りやすい曲=「ど演歌」を誰かが歌うと、自然とステージに上がってそのバックで社交ダンス風に踊っている。逆にこの方たちに踊って頂くには、やはりカラオケの選曲に工夫が必要、ということになる。
独特の「ゆるさ」と「昭和」に満ちた大船ラドン温泉。いずれみんなでここの大ホールでカラオケをやったら楽しいだろうな。ただ、あんまり大勢でゾロゾロ行ったら、いつもココで楽しんでいるおじいさんやおばあさんの楽しみを奪ってしまうような気もして、そこが難しいトコロだ。そんないらぬことも考えていた。
最後に健康ランドつながりってことで、関西では有名な「奈良健康ランドCM」
ディスカッション
コメント一覧
一度は行ってみたい大船ラドン温泉 笑
なかなか風情があっていいですね。
最近舞台に立ってないから行ってこようかな?
そういう内容でくるとわかっていたため、自分のmix○はかなりライトに仕上げましたよ。。
なんとかビールの人はわしの時、ちゃんと聞いてくれてたのでしょうか?
昔行きました。多分今から12~3年前。
茶色いお湯が印象的。
舞台で娘がカラオケを歌い拍手をもらった記憶があります。
>すみくん。
風情ありすぎ、情緒盛りだくさんです。
ぜひ度胸試しにどうぞ!
>カミム
ライトな作りに「書くべき道」みたいなものを予感しました。
なんとかビールの人にはその段階で注意を払っていませんでした。
>リンパ
あの茶色いお湯は肌によいと家内が言っておりました。
娘さんやるなぁ~。
>リンパさん
おはつです。
当時であればきっと岩風呂の湯はまだまだまっ黒だったのでしょうね。
わたしは7年前頃頻繁に入りましたが、当時でさえ風呂の底が見えなかったのに。
今はだいーぶ薄くなりましたよ。
読んでいるだけで昭和がガンガン伝わってきました!
なんとかビールの人、おいしい仕事だなw
>カミム
あの茶色いのはもっと黒かったんだ。
あれがラドン温泉なの?
>ちっちき
そう、昭和そのもの。
食品会社ってベタな仕事だけど、たまにこういう仕事なんだか遊びなんだかわからない仕事があったよ。
僕も商談行って背広のままジェットコースターに乗ったことがあるぞ!
黒い方は、いわゆる掘ったら温泉出ました、な天然温泉。
ラドン風呂は、その付近に怪しげな小部屋。
湯船が苦手な人には長時間滞在が不可能なエリアです。
ラドンのヒサオと申します。覚えていらっしゃったら光栄です
皆様、その後お元気でしょうか? 大船ラドン温泉カラオケ大会も今年下期半期で 第10シーズン目に入りました。その間幾人かの、素晴らしい歌唱をされたグランドチャンピオンが誕生なさいました。実質その名にふさわしい マサトシ様共々、また 是非 お会いしたいものです。
私くしめ、月二週くらいをめどに 土曜日などに、ラドンへおジャマしていますので、機会ございましたら 足を運ばれて頂きたいです。では、お元気で。
>ヒサオさま
たしか歴代グランドチャンピオンの方でしたね。ご無沙汰しております。またコメントありがとうございます。
あれからなかなか行けておりませんが、生徒さんは何人か行かれていると思います。また機会がありましたら伺います。お会いできるといいですね。