暑気払い at シェラトン -ローストビーフには間にあった-

教室事件簿

仕事が終わる時間が遅いのもあって、僕の会社ではあんまりスタッフで飲みに行ったり食べに行ったりすることが少ない。
震災以来何かとバタバタしていたのと、仕事も一段落してきたので「暑気払い」を含めて横浜ベイシェラトンの「コンパス」というお店のディナーブッフェ(バイキング)に行ってきた。

僕はこのお店には何度か来たことがある。改まった風でもなければ、カジュアル過ぎるわけでもない。アルコールよりデザートという乙女たちと食べるにはうってつけのお店だと思った。

問題はとりあえずローストビーフにある。「コンパス」ではまるごとのビーフを目の前でシェフが切ってくれる。これが実に美味しい。
ジューシーでぷにょんぷにょんした食感がある。スーパーのパサパサしたものとは大違い。ただこの店のディナーブッフェは本来第二ラウンドが19時にスタートする。そして21時30分でオーダーストップだ(これでも横浜のバイキングでは営業終了時間は遅い方)。20時にレッスンが終了したとしても移動時間を含めると、選んで食べれるのはせいぜい1時間、ということになる。

タイミングによっては「まるごとのビーフ」がなくなってしまうのではないか?そんな心配しした。
だから予約する際に「90分ぐらい遅れて行くのでロースト・ビーフを残しておいて下さいね」と念を押す。もちろん冗談だけど、係の女性が「ご心配ありませんよ」と笑いながら言ったのが面白かった。

こういうお店のことを書くとすぐに「そこのシェフと知り合いだ」って自慢する人を知っている。じゃあ何かい?知り合いならばローストビーフを腹一杯食べさせてくれるのかい?といつも思う。「知り合い」と「親友」の弁別は大切だ。今回は株式会社ミューズポートのおごりだ。我々は頑張って働いて、自分たちの力でローストビーフをゲットしたのだ。それが霧笛楼やシリウスのフルコースであろうと帝国ホテルのシャリアピン・ステーキであろうと、ゲットする時はサトシみたいに自分の力でゲットするものだ。たかがローストビーフに僕は何を言っているだろう?とにかくローストビーフが美味しいっていう事は事実なのだ。

実は"Acoustic Style"のDVDが異常に早く完成したのも、ローストビーフが大きな理由だった。やるべきことを全て終えて、腹いっぱいローストビーフを食べるぞということに燃えていたのだ。PCで動画を編集しながらも「ローストビーフ」を夢みていた。
そんな時、脳内を浮世絵の描かれた雁の群れのようにローストビーフが舞っていた。

(安藤広重、隅田川八景「渡場落雁」に描かれたローストビーフの群れ)

さて「暑気払い」当日の8月6日がやってきた。
先生方のレッスンが終わるのが20時だ、業務終了後、速攻で出動する体勢で臨む。先生方も食事を抜いて臨戦態勢で臨んでいる。
そうしていたら、この日に限って19時台の生徒さんが2人お休みするという事態が発生した。
「それならば」ということで、Emiさんとhitomiさんに先にシェラトンに直行させる。
「遠慮なく先に食べててね。ついでローストビーフを確保しておいて」と言うことは忘れない。

そしてNoriちゃんのレッスンが20時に終了する。
「さぁ行くよ」と言うとNoriちゃんが「メールのチェックが」と言う。さっきチェックした時点でメールは来ていなかったから大丈夫なはずだ。だからこう言った「タイタニックが沈没する瞬間に電報をチェックする必要はない」。
さっぱり意味がわからない。

車に飛び乗ると、デロリアン並みの加速をつけ、ターボエンジン全開でシェラトンへと向かう。

冷静に考えてみれば、人間が腹一杯になるまで食べる時間なんてせいぜい30分だ。
1時間は余裕があるのだから時間的には申し分ない。残念なのは食べ休みをして第二ラウンドという余裕がないということだけだ。

そうしているウチにシェラトンに到着。正面玄関でNoriちゃんを降ろしたら「セレブみたいだわ」と喜んで降りていった。
地下の駐車場に駐車するとエレベーターで2Fのコンパスに。「ムネさん、こっちこっち」と呼ばれてテーブルに座るとこれだ。

う~ん、幸せ。

30分ほど前に到着した先発部隊は「美味しい美味しい」と意ってすでにガッツリやっていた。

どれを食べても美味しいので、ひととおり回る。
いつもだったらひとつのメニューを皿に取るのに並ぶことが多いのだけど、今日は時差出動したこともあって、好きなメニューにひょいひょいと直行することができた。

もう沢山というところでちょうど閉店。食べたローストビーフの枚数はナイショ。

「それじゃあEmiさんを送るついでに夜のドライブでもしますか」と首都高湾岸線に乗り込む。
Emiさんの家に行く途中には「首都高速神奈川6号川崎線」というのがある。
昨年の年末に、湾岸線の浮島JCTから大師ICまでが全通したのだけど、マイナーな路線のせいかほとんど車が走っていないところだ。
実はここから見える工場の夜景というのが、信じられないほど美しいのだ。

この付近は化学系の工場が密集している。巨大建屋にすっぽり入っているのではなく、中小規模の化学プラント設備が野外に軒並み建てられているところがポイントだ。そのひとつひとつの照明が光の粒を撒き散らしたように、輝いているわけだ。

運転しているからよくはわからないけど、Emiさんは「うぉぅ」と言いながら喜んでいるのだろう。hitomiさんは助手席でキャーキャー言いながら喜んでいる。Noriちゃんは「まぁ綺麗」とかいいながら静かに見入っているんだろう。

考えてみれば、今まで8年間、シャラトンのような豪儀なトコロでスタッフと食事するなんてことは一度もしたことがなかった。せいぜい上大岡の居酒屋だ。まあこういうことに無頓着な人間が経営者なんだから仕方がないけど、乙女たちの笑顔を見ていると「よっしゃあ、来年はどうしようかな」なんてことを考えてしまうのだ。

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