緊張の夏、鍵盤の夏

ライブレポ

まつざきさんから「8月5日の港南中央Rondoでのコンサートですが、ムネさんピアノで一緒に一曲何かやりませんか?」とメール頂いたのは1ヶ月ぐらい前のことだった。「私でよければ喜んでお手伝いさせて頂きます」とお返事した。

お返事はしたものの、さあ大変なことを引き受けてしまったぞ、と思った。

7月31日のスクールライブには、初めていち生徒として出演する。その一方でまつざきさんのようなプロ歌手の方の伴奏をするというのも初めての経験だ。去年、斉藤哲夫さんとまつざきさんのライブでギターを担当したリュウちゃんが「すげ~緊張した」と意っていたことも思い出し、得体の知れないプレッシャーがずしりとのしかかっってきた。

まあ、緊張することを一週間のうちに2度やるというのも、この年齢で新しいことをできるのも珍しい経験なので、勢いでゆくことにした。

勢いというものは恐ろしいもので、先週の土曜日は岡山へ日帰り、日曜日はスクールのライブ、そこからは動画編集とDVD製作に集中して昨日それを完成させた。

DVDを焼いている間は、今日中に作らなければならない決算関係の書類を作るかスタジオでピアノの練習するかのどちらか。何とか夕刻5時にすべて終えることができた。DVDに関して言えば、以前1週間でリリースという経験があるけど、5日というのは最短記録じゃないかと思う。
でも二度とこんな早業はしたくない。そんな勢いの中で、一番ほっこりしたのはスタジオの中でポロンポロンしていた時じゃないかと思う。

そんなわけですべてを終えた....いや違うな...あれやこれやとカタをつけた中で、原付に飛び乗ると港南中央のRondoさんへと向かった。Rondoでリュウちゃんとも合流する。

この日はまつざきさんと千葉山さんのライブが一日2回公演で行われている。
夜の部はまた違った趣向で行おうというわけだ。

まずは千葉山さんのライブ。
こんなことを僕が言うのも生意気だけど、お会いする度にグングンと成長されている方で、その速さに驚かされる。
なんだかいま、非常にいい波に乗ってらっしゃるなという印象を受けた。
MCによれば2003年に「はまなす哀歌」でデビューして以来、3枚のシングルをリリースしているとのこと。そして今回は「本日発売日が11月30日に決定した」という新曲「雪恋歌」もお披露目してくださった。
これは余談だけど(ご本人も公表されていること)、千葉山さんは元々京都の立命館大学の学生で大学生協のCDショップでアルバイトしていたこともある。好んで演歌の品揃えを充実させていたという驚くべきエピソードは都築響一の「演歌よ今夜も有り難う」に詳しい。
ちょうどその時期は僕が京都の太秦でCDショップの雇われ店長をしていた時期と一緒だ。立命館の学生さんは一直線にガッツのある仕事をしてくれる子が多かったので、好んでアルバイトに採用していた。そんな子たちの中には千葉山さんの同級生や大学生協でCDを買っていた子もいるわけで、そういう意味でも何だか親しみを感じてしまうのだ。
ちなみに当時の立命館には"くるり"の岸田が在学していたはずだ。その事を尋ねたら「よくCDを買いにきましたよ」とのこと。

千葉山さんのステージの後はまつざきさん登場。

シングル曲によるノンストップのメドレーで始まったステージで会場が盛り上がる。こうやって聞いていると、本当にいい曲を頂いているなと思う。いわゆる「ド演歌」ではなく、時にはムード歌謡であり、時には1970年代テイスト溢れるフォークの世界だ。
とりわけ僕が好きな曲は「6月のジルバ」のカップリングの「夜泣き鳥」。

この2曲は攻守のバランスが良くて、まつざきさん最強のシングルだと思っている。

とそんな風に聞き入っているうちに「ここでゲストをお迎えします」というMC。
ギョッ、僕の出番だ。

(撮影:ヌッキー@リュウ氏)

というわけで、緊張しながらも「君すむ街」のピアノ伴奏という大役を何とかこなした。
何しろお互いに練習する時間もなくて、本番直前に1度だけあわせた。本当に自分の拙さにはヒヤヒヤものだった。

今まではまつざきさんのCDにあわせて演奏の練習をしていた。だけど、ナマのご本人の歌唱と合わせるというのは、これは別の難しさがあるものだと感じた。プロ歌手の方ってそうなんだけど、御自分の歌をずっと歌い続けているウチに、わざとリズムとずらしたりもたれるようにして歌うようになる。決してCDどおりに正確には歌わない。まつざきさんの場合はもの凄い声量があるから、こっちが正確にリズムを刻んでゆこうとピアノを弾いていても、そのもたれ具合につられていってしまうのだ。こういう場合、まつざきさんに合わせてゆくか、あくまで正確にリズムを刻み続けるか?という判断は歌の様々な局面で異なってくると思う。まつざきさんがズラしても、こちらは正確にキープした方がいいパートもあれば、そうではなく合わせていった方が良さそうなパートもある。
なかなかそのあたり臨機応変にプレイできなかったので、歌いにくかったのではないだろうか?と反省している。今回はそういうことに気づいただけでも勉強になった。まつざきさん、いつかもし機会があればスタジオに篭ってじっくりやりましょう!

(撮影:ヌッキー@リュウ氏)
それとリハの段階ではボーカルを引き立てるために「おとなしめ」に演奏していたのだけど、「もっと派手にやって下さい」ということだったので、本番ではフィルインとか、リフのシンコペを入れたりして、随分好き勝手にさせて頂いたと思う。

さて、ここで僕自身は予想はしていたのだけど、さらにゲストが登場。ヌッキー竜ちゃんだ。

何と前日にまつざきさんに「2曲ほど歌って下さい」と言われて急遽ギターを引っさげての登場だった。そしてひと晩で練習した曲が偶然にも同じ「君すむ街」。しかもリュウちゃん、それをお客さんの前で弾き語っちゃいました。普通だったら避けるような曲目をあえてぶつけてくる。それは予想外でもあるけど、だいたいにおいて、この人のやることには予想外の要素が必ずあるから面白い。誰もが「こうするだろうな」というところをあえて外し、「こうはしないだろうな」というところをあえてしてくる。じゃあ予想外続きかといえば、お次は長渕で「乾杯」という普段は滅多にやらないような有名曲でTPOにあわせた直球も投げてくる。こういう緩急自在に遊べる所はとても勉強になる。

そしてお次は二人のデュエットで「なごり雪」

昨年の7月の初頭、稲村ガ崎で行われた斉藤哲夫さんとのジョイントライブで、お二人がデュエットした曲の再現だった。

そんな風にして2時間30分のジョイント・ライブはあっという間に終わった。「あっと終わる」というのは、時間がたつのを忘れるほどいいステージで、そのステージに引き込まれていたということだ。

最後に速報。
10月20日にこの港南中央のRondoさんで再び斉藤哲夫さんとまつざきさんのジョイントライブが行われる。今回は斉藤さんにサポートのキーボードプレイヤーがつき、まつざきさんはまつざきさんでヌッキー竜ちゃんとコラボをする予定だ。日本人離れしたメロディーメーカーの斉藤さんとの異色コラボ。騙されたと思ってもいいから、これは絶対に見ておいた方がいい。冥土の土産になること間違いなしだ。

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