山下毅雄

おみおくり

僕がまだ3つか4つの頃、テレビから踊りはしゃげる音楽が流れてきた。
「さぁ~ゆけ悪魔くん!魔法のつーえだっ!エロエロエッサイムゥ~ウッ」(悪魔くん)
「ガボテン、ガボッテンガボッテン、ガボテン、ガボッテンガボッテン」(冒険ガボテン島)
幼児だった僕はこの2曲が大好きだった。曲が流れると、部屋の中をグルグル廻っていた。

僕が小学生の頃、ときどきテレビからアダルトな音楽が流れてきた。
「パヤッパァ~パヤッパァ~」(時間ですよ)
「パッパヤ、パヤッパッ」(プレイガール)
「ダバダバダバダバ、ルパン・ザ・サードッ」(ルパン三世)
「足ぃ~もとに~、からみぃ~つくぅ~」(ルパン三世)
「ン~ン~ンンンンン~」(大岡越前)

その多くは女性の色っぽいスキャットで、いずれ来るであろう「大人の世界」を垣間見させるような音楽だった。70年代って、子ども向けと大人向けの線引きが曖昧な番組が多かった。もちろん子どもにコビるような番組も少なかった。そうした番組に乗ってそれらの音楽は流れてきた。

大人も大人だった。たとえば小学生の僕が「ウッフーン、プレイガール、チュッ」とやると、大人たちは腹を抱えて笑っていたものだ。「子どもがそんな真似しちゃ、いけません!」なんて怒る親はいなかった。

こうした一連の音楽の作曲者が「山下毅雄」という人物なことを知ったのは、1990年代に突如として巻き起こった「ヤマタケ・ブーム」の時だった。時にはラテンチックで、時にはジャジーな山下毅雄の音楽は60年代~70年代の瀟洒な「トーキョー」の雰囲気を想像させて(あるいは回顧させて)くれた。あの「ルパン三世」のリミックス・シリーズもこのヤマタケ・ブームがなければ実現しなかったと思う。

その山下毅雄が、11月21日に脳血栓で亡くなったことが本日になって公表された。享年75歳。

山下さん、あなたのお陰で「シュビドゥビ、パパパヤ」な子ども時代が送れました。ありがとう。

P.S.これは余談だが、京都の太秦時代からお付き合い頂いているハマさんという方がいる。ハマさんは昭和30年代から映画やTV番組の整音(BGMを加えたり、効果音を挿入したりする)をされている方なのだが、この方とヤマタケの話をした時に、「ボクは山下さんのBGMをずいぶん使用したことがあるよ、まだ自宅かスタジオを探したら彼のBGMのテープがあるんじゃないかな。”そこもっとテンポをあげて”とか”もっとゆっくり!”とか、本人の肉声も入っていたはずだ」なんて、凄いことを言っていた。

P.S.教室においてある僕のコレクションにも「ヤマタケ、サウンド」がゴロゴロあるよ。

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