「天国への階段」は「裁判所への階段」だった

上大岡的音楽生活

いやはやレッド・ツェッペリンの名曲「天国への階段」が盗作疑惑で陪審裁判なんだそうだ。
アメリカのロックバンド『スピリット』が1968年にリリースした1st Album「Sprit」に収録されていた「Taurus」が似ているとかで提訴されたらしい。

【Led Zeppelin – Stairway To Heaven [1971.11.8]】


【Sprit – Taurus [1968.1.22]】

スピリットかぁ....1980年代にソニーからリリースされた彼らのベストアルバムが我が家にあったはずだ、なかなかいいバンドだったよな、確かサンプラザ中野に似たヤツがメンバーにいたんだよなと探してみたんですが、どうも見つかりませんでした(;^ω^)

実際この曲聞いてみると、まあアコースティックギターの進行の一部が似ているっちゃあ似てるんですが、こういうのって1960年代の後半には「ありそうな」音だし「酷似」というには程遠いんじゃあないでしょうか。まあ頭抱えていても仕方がないので「それを言うなら」と思った曲をいくつか紹介します。あるいはこれで裁判所への階段が近くなるかもしれません(冗談で書いているので、マジレスは勘弁して下さい)。

■構成への階段

【The Kinks – Shangri-La [1969.9.12]】
The Kinksのアルバム「アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡」の先行シングルとして半月前にリリースされたこの曲は、楽曲の構成が「天国への階段」に似ているんです。まず進行が四部構成という所が一緒。最初はアコーステイックサウンドから始まって、次第にバンドサウンドとなってゆき、次いでパワーコードのクライマックスを迎え、最後はしっとり終わるところが一緒です。
しかも「天国への階段」第三部のアップテンポ部分とこの曲のアップテンポ部分(2m50sあたりから)とではコード進行やリフの刻み方がクリソツです。私なんぞは長年の間、ツェッペリンのジミー・ペイジ君はこの曲にインスパイアされたんだとばかり思っていました。
一件「シャングリラ=理想境」から「天国」との関連も疑われそうですが、これはアルバムの主人公がようやく手に入れたマイホームの名前なんで、あんまり関係はありません。

■曲名への階段

【Neil Sedaka – Stairway To Heaven [1960.03]】
「星へのきざはし」という何とも文学的な邦題がついていますが、原タイトルは「まんま」です。

■メロディへの階段

【鈴木静一 – 「姿三四郎」主題曲 [1942.3.25]】
冒頭からではなく、59秒ぐらいから始まる「主題曲」がそれ。
「ラ・シ・ド」の音のみを使ったメロディーラインが「There’s a lady who’s Shure」の歌詞部分と酷似しています(そりゃあ似るに決まってる)。ジミー・ペイジが世界のクロサワの映画を見ていたとしたらインスパイアされた可能性はあります。もう滅茶苦茶ですね。

■第二部ギターリフへの階段

【The Who – Undeture [1969.05.23]】
アルペジオで始まる「天国への階段」は2分13秒ぐらいから12弦ギターの美しいリフとなります。12弦ギターの1~4弦のみを使った美しいパワーコードといえば、みんな大好きThe WhoのPete Townshendが1969年にかき鳴らしたこの曲が浮かびます。僕自身はジミー・ペイジ君はこの曲にも影響受けたに違いないと長年そう信じてきました。

■イントロへの階段

【Davy Graham – Cry Me A River [1963]】
実はスピリットの訴訟騒ぎなんて簡単にブチ壊しかねないのがこの人。イギリスのギタリスト、デイヴィ・グレアムがその人。Simon & Garfunkelの「Anji」のオリジナルを書いた人です。この人がアメリカンスタンダード「Cry Me A River」をカバーしているバージョンは、随分昔から「天国への階段」最初のアルペジオの元ネタなんじゃないか?という事が言われていました。
それだけじゃありません。

【Davy Graham – She Moved Thru’ the Bizarre [1963]】

【Yardbirds – White Summer [1967.7]】
ヤードバーズ時代からジミー・ペイジ君がディヴィ・グレアムに敬意を愛情を抱いていたことは明らかだと思うのです。

何しろアメリカは訴訟社会。かのマイケル・ジャクソンなんかも「あの曲は俺のパクリだ」的な裁判を同時に何本も抱えていたと聞いています。
「言ったもの勝ち」というのはあんまり良いことではありません。しかしそんな事を言うのであれば、すべてのロックミュージシャンは南部デルタ地方のブルースミュージシャンや、アトランタのカントリーミュージシャンや、ニューオリンズのジャズミュージシャン、アイルランドのケルトミュージックのミュージシャンに訴えられたらグゥの音も出せないんじゃないかと思います。

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