ロジャーマッギン at 楽器ファア2007
予告どおり行ってきました、楽器フェア2007。
見てきましたRoger McGuinn(ロジャー・マッギン)。
今回のロジャーの来日は、Martinの"D-7 ロジャー・マッギン・モデル“のプロモのため、Martinの輸入総代理店である黒澤楽器が招聘したもの、のようだ。それはそれとして....とにかく僕にとっては伝説のThe Byrds(ザ・バーズ)のリーダーであり(綴りは"i"ではなく"y"だかんね)、素晴らしい音楽家であり、サウンドクリエイターであり、ギタリストでもあり、エレクトロニクスマニアであり、モーグのシンセサイザーなんか誰よりも早く好きだった人であり....とにかく25年もの間、なかなか見るチャンスのなかった大人物だった。その彼をようやく見ることができる。その想いだけで、今日はココへと来た。
カミさんと子供たちをつれてパシフィコ横浜へと向かう。どこでどう勘違いしたかは容易に想像つくが、次女は港南台のショッピング・センター「バーズ」に行くと勘違いしていたようだ。
現地でキタさんとマコトと合流し、ステージのある会場へとむかう。振り向けばそこにはマサトシさんの姿もあった。そう、今日はマサトシさんオススメの”ミトカツユキ”もKorgのブースで出演するのだ。皆でゾロゾロ先頭の席へと座る。
やがて、どこからともなく「御大」が登場する。黒のスーツに黒の帽子。25年来のファンである僕にとって、ようやく「御大」にお目にかかれた瞬間だった。感動に震えるっていうのはこういうことだよな。
まずロジャーによって7弦ギターが生まれた経緯が説明される。
「これは私の7弦ギターHD-7。お気に入りの一本です。どうしてこのギターが生まれたかを説明しましょう。以前飛行機でパリから戻る途中に、積んでいた12弦ギターのネックが折れてしまったことがあります(筆者注:気圧や温度変化によるもの?)。そのときに6弦と12弦のギターを一本のギターにできたらよりいいんじゃないかと考えました。その場合G弦(3弦)は(7本目の弦でペアにして)倍音を構成することがポイントでした」。
ここでロジャーが"Turn! Turn! Turn!“のギターソロの部分を演奏し「Jingle Jungle! Jingle jungle!」と叫ぶ。
「Jingle Jungle」とは鐘がカンカン鳴るような響きのこと。バーズ時代のロジャーの12弦ギターの響きを称してよくこう言われたものだ。ロジャーは「3弦だけがペア弦という構成でも、こんなに響くんだよ」ということが言いたかったようだ。
ロジャーによれば、12弦ギターの場合だと、低い音(6弦や5弦)でブルーグラス系の音のリフを奏でる場合に、指がどうしてもひっかかってしまう。それと1弦や2弦でのチョーキング(ベンディング)プレイも難しい。そういうところから、3(G)弦だけをペア弦にするという7弦ギターの発想が生まれたようだ。
「このギターは両者(6弦ギターと12弦ギター)の良いところをを兼ね揃えた、スイス・アーミー・ナイフのようなギターです」
というのが彼の言。
そんな経緯でMartinのカスタム・ショップで作ってもらったギターを、ショップの責任者が気に入り、Martinのシグネチャーモデル(専用モデル)として採用されたのだという。ロジャーにとって、これはMartinの3本目のシグネチャーモデルとなった。司会者も言っていたけど、Martinのシグネチャー・モデルに選ばれるというのは、ギタリストにとっても名誉なことで、3本以上選ばれたギタリストは世界にエリック・クラプトン、スティーブン・スティルス、ローレンス・ジューバーしかいない。
そして演奏が始まる。
いわゆる1弦のチョーキング・プレイが12弦ギターでは難しいことを説明した上で、"The James Alley Blues“を歌う。
彼のFolk Denプロジェクトの中でも取り上げられている古いブルースだ。
続いて「先ほど"Jingle Jungle Sound"と言いましたが、お次はJingle Jungle Songをやりたいと思います」。と前置きして"Mr. Tambourine Man“が始まった。一番有名な曲だからして、当然大きな歓声が上がる。振り向くと50人以上の人たちがステージを見ているのに驚いた。
さらに、「ブルーグラス(アイルランド系民謡をルーツとしたカントリー・ソング)のピッキングについて言い忘れていました。この7弦ギターではブルーグラス・ピッキングも簡単に演奏できます。ザ・バーズの"Sweetheart of Rodeo(ロデオの恋人)"からの曲です」。と前置きして"Pretty Boy Floyd"が、"Black Mountain Rag"が続く。
“Black Mountain Rag"といえば頭に浮かぶのは、ザ・バーズが最高のラインナップだった時代....1970年2月のニュー・ヨークでのライブ録音だ。天才的なカントリー・ギタリストでバーズのギタリストとしても在籍していたクラレンス・ホワイトのアコースティック・ギターの卒倒するような早弾きだ。当時のロジャーが「これからクラレンスがフィドル・チューンを弾きます。頑張って彼についてゆきます」とMCしていたのを思い出す。クラレンスは1972年に楽器を車に積んでいるところを、酔っ払い運転の車にはねられて亡くなったけど、もしいまクラレンスが生きていて、ここにいたら....背筋も凍るようなツイン・ギターとなったことだろう。その曲を今なおロジャーが弾き続けているのが嬉しかった。
お次は"Turn! Turn! Turn!“。当時全米1位となった曲だ。
途中でロジャーが「皆さんもご一緒に!」と言うと、「たーん、たーん、たーん」と合唱となっていった。とても不思議な気分だった。バーズやロジャーのファンって、地下活動家みたいなトコロがあって、こんな表に出てくることなんか、滅多にないからだ。
そうか、日本にファンがこんなにいたんだ....
これで一旦ロジャーのステージは終了するけど、アンコールに応えてまた出てきてくれた。
「この曲には3つのエレメンツから成り立っています。偉大なる3人の音楽家、ひとりはジョン・コルトレーン(Jazzのクラリネット奏者)、ひとりはラヴィ・シャンカル(インドのシタール奏者。ノラ・ジョーンズのお父さん)、そしてもうひとりはアンドレス・セゴビア(クラシックギター奏者)です」というアナウンスが始まった時点で、観客は熱狂する。
そして「Eight Miles High」が始まった。
パイプオルガンが奏でる教会音楽のような導入部から始まって、あの有名なラーガ風のイントロへとつながってゆく。手に汗握るギターの一本勝負。ギターがこれほどにモノを語るとは.....
そしてライブ(黒澤楽器の方は"セミナー"って言ってたんですけどね)が終了した。
かつてバーズ時代に、ロックの輪郭を描いてみせたように、このわずか30分のステージで、ロジャーはワールド・ミュージックのちょっとした輪郭を見せてくれた。
この日、もしサインを頂ける雰囲気ならば、ぜひ貰いたいと考えていた。
問題は何にサインをしてもらうか?だ。
バーズ時代のアルバムを持っていったら逆に失礼になるかな?
やはり解散後のソロ・アルバムのほうがいいかな?なんてことを考えていた。
結局選んだのは、高校生の時に買ったバーズの4th Album「Younger Than Yesterday(昨日より若く)」の古ぼけたアナログ盤だった。
高校生の頃、彼らの国内盤アルバムは1st「Mr.Tambouline Man」をのぞいてすべて廃盤となっていた。他のタイトルが新大久保あたりの輸入盤屋にあるらしいというウワサを聞いた僕は、わざわざ電車に乗って探しにいった。そうやって入手したアルバムのひとつがこれだった。のちにCDで二度ほど再発されているが、僕はすべて買っている。
それだけではない。「Younger Than Yesterday」というアルバム・タイトルそのものが、とても好きな言葉だ(言葉自体はBob Dylanの「My Back Pages」という曲の一節「I’m younger than that now」からインスパイアされたもの)。未だ適当な座右の銘が見つからない僕にとって、これは僕の座右の銘がわりとなっている(横須賀には同名のライブハウスもあるんだな、これが)。
まあ、そんな「こちらサイド」の思い入れがロジャーに伝わるとも思えないが、ライブ終了後にダッシュで駆けていった成果がこれ。
一生宝物にしようっと!
参考サイト
●Roger McGuinn公式サイト
(相変わらずエレクトロニクス・マニアとみた)
●上記サイトの本人によるBlog
●Folk Den(トラディショナル・ソングのプロジェクト)
●The Byrds Homepage
●Wikipedia(日本語) Roger McGuinn
●Wikipedia(日本語)The byrds
●Wikipedia(英語) Roger McGuinn
●Wikipedia(英語)The byrds
●C.F.Martin& Co.Inc
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