11/18 ポール・マッカートニー in 東京ドーム

ライブレポ

「お伊勢詣りみたいなもんかな」
ポールのコンサートへ行く感覚をたとえてカミさんに言った言葉です。

ビートルズの音楽に出会っていなければ今の自分はいないけど、自分はどちらかと言えばジョンレノンが好きでした。
だから今までポールのコンサートへ行ったことはなかったのです。今回の来日は「今度いつ来れるかわからないから、記念に”神様”を見に行こう」という気持ちがあったわけです。
ポールのファンにしてみればとんでもない話ですね。
11/18 ポールマッカートニー in 東京ドーム
でもそんな斜に構えた姿勢で行ったとしても、東京ドームというあまりにも広すぎて「見た」感のない会場だとしても、ステージ3曲目の「All My Loving」を聞いているウチに「ああ、俺は(ビートルズを聞き出してから)34年を経て、今ようやくホンモノを見ているんだなぁ」という実感がじわじわと湧いて来たわけです。
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ポールは双眼鏡で見ても米粒ほどにしか見えませんでしたが、71歳とは思えない力強いボーカルだったし、スリムでスラっとした体型が、昔と変わりませんでした。
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18日のセットリストです。
あえて最近のツアーの前知識を得ずに行ったのだけど、ジョンの曲で始まるのも意外でしたし、ジョージの「Something」をプレイするとは思いもしませんでした。そしてジミヘンもチョロっとプレイしていました。亡き妻、リンダへ捧げる曲もありました。
それはあたかも1960年代というロックの戦場を追悼する儀式にも思えました。その「牧師」役こなせるのはポールしかいないでしょう。

一方でSgt.Pepper’sの時代...極彩色なサイケデリアの時代への拘りということも、ポールにはあったように思います。
彼がプレイしていたサイケデリックデザインの鍵盤楽器(年代物?)もそうですが、照明や背後の映像も極彩色なものが多く、そしてSgt.Pepper’sからの思いもかけない選曲にそれを感じました。単純に当時ステージで再現できかった音を再現しようというのではないと思います。何か甘美な時代へのノスタルジアを感じずにはいられませんでした。

Eight Days A Week (The Beatles – ジョンの曲をオープニングとは...)
Save us (“New" Album)
All My Loving (The Beatles)
Listen To What The Man Said (Wings)
Let Me Roll It – Foxy Lady (Wings – Jimi Hendrix)
Paperback Writer (The Beatles – ポールがベースをプレイしなかったのが残念)
My Valentine
1985 (Wings)
The Long And Winding Road (The Beatles – ドラムもうちょい抑え目でもいいのでは)
Maybe I’m Amazed (ソロでは好きな曲)
I’ve Just Seen A Face (The Beatles)
We Can Work It Out (The Beatles)
Another Day (12弦の響きがいいね)
And I Love Her (The Beatles)
Blackbird (The Beatles、アメリカの公民権運動に影響を受けて書いた曲とMC)
Here Today (ジョンの事件後に書いた曲。日本語で「ジョンニハクシュヲ!」とMC)
NEW (“New" Albun このあたりトイレタイムになっていた気がする)
Queenie Eye (“New" Albun)
Lady Madonna (The Beatles)
All Together Now (The Beatles – 日本人向け?)
Lovely Rita (The Beatles – マイナーな曲だけど、今あえてやりたかった気持ちがなんとなくわかった)
Everybody Out There (“New" Albun)
Eleanor Rigby (The Beatles)
Being for the Benefit of Mr. Kite! (The Beatles ジョンの作品。直前のMCでは観客をいじくるいじくる...)
Something (The Beatles ジョージの作品「ジョージニハクシュヲ」とMC)
Ob-La-Di, Ob-La-Da (The Beatles)
Band on the Run (Wings これはナマで見たかったんだよね。途中から12弦が来るところはゾクゾクした)
Back in the U.S.S.R. (The Beatles。バックの映像が秀逸!)
Let It Be (The Beatles)
Live And Let Die (Wings – 炎と花火の演出がナイス。よくドームでこれができたよな)
Hey Jude (The Beatles – もう合唱、合唱)
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アンコール1
Day Tripper (The Beatles – 自分の生まれた日に発売されたシングルを、本人の歌で聞けるとは)
Hi, Hi, Hi (Wings)
Get back (The Beatles)

アンコール2
Yesterday (The Beatles)
Helter Skelter (The Beatles – これも予想外の展開だったけど、ポールの「俺はどんな曲でもやってきた」というドヤ顔を感じずにはいられない流れ)
Golden Slumbers – Carry That Weight – The End (The Beatles なるほど、そう来たかと思いつつ堪能)
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これは保守的なもの言いかもしれませんが、結局のところロックという音楽は1965年ぐらいから1977年ぐらいまでの間に急激に拡大して、その大きな輪郭を描いてしまっているのだと思います。「ロックの多様性が描かれた10年」と言った方がわかりやすいでしょう。その後はその輪郭の中で進化と変質を続けているのだと思います。
その大きな輪郭を(ラフな形にせよ)描いた人物の中にビートルズのジョンやポールがいて、ディランがいて、バーズのロジャー・マッギンもいて、ビーチボーイズのブライアン・ウィルソンもいて、ザ・フーのピート・タウンゼントもいたわけです。あっストーンズもそうですね。
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僕がみたのは、それを最も大きく描いちゃった当の本人のライブなんですよ。
そこには一人の人間が書いたとは思えないような音楽の多様性があるし、それを3時間弱のステージで総括しちゃうわけですから、信じられないぐらいの見応えがあったわけです。別の言い方をすれば、これはロックの歴史の最も重要な部分をダイジェストした「Rock Show」なのでしょう。

そして何よりもポールのエンタティナーとしての潔さには脱帽でした。日本語のMCも、観客のいじり方もそうですが、高みから伝えるんじゃなくて楽しませることを前提にして、彼は一緒に楽しんじゃっているんです。彼自身、ビートルズの曲をプレイすることに対する葛藤って20年ぐらい前には、あったんじゃないでしょうか。なんだかそういうトコロをもう解脱しちゃっている。そういうことも含めて、ポールはロックの歴史ではもはや”神”の領域なんでしょうね。
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さて、僕個人的には、
11月16日「Yokohama Gumbo Circus」
11月17日「Winter Live 2013」
11月18日「Paul McCartney out there Japan Tour 2013」
というライブ漬けの3日間でした。

さらに今週の金曜日には演歌(まつざき幸介)とプログレッシブ・フォーク(喉)、そして土曜日には演劇に行ってきます。
この一週間で、ありとあらゆる音楽を見てしまったような気になっても仕方がないでしょう。

ライブレポ