拓郎(井上ともやす) / 長渕(Okaji)トリビュートライブ at 上大岡くんくんしーらや

ライブレポ

上大岡に「くんくんしーらや」というお店があります。
「沖縄料理と東南アジア料理とライブ」というのがウリでして、お店がオープンしたのは僕の記憶では2004年のことでした。
つまり僕がスクールを立ち上げたのと同じ年だったはずなんです。
ですからお店の金子さんとは何のかんので14年来のお知り合いになります。

先方さんがどう思っているかどうかはわかりません。
(いや、多分こちらが勝手に思っていることなのですが)、僕は上大岡で「音楽生活」で生き残ってきた仲として勝手に「同志」だと思っています。

先日のブログで書いたように、吉田拓郎のカバーではこの人と言われる井上ともやすさん、実は同じ高校の同じサークルの後輩でした。
その彼が実はこの「くんくんしーらや」で何か月に一度ライブをやっているのでした。

なんかできすぎた偶然なのですが、音楽の縁とはこういうものなのかもしれません。
井上さん(というか君)は、実は沖縄音楽にも造詣が深くて、三線の師匠なんかもやっている。
おそらくはそういう縁なんだと思います。

6月2日、そのお店で行われた井上ともやす(吉田拓郎)とOkaji(長渕剛)による「拓郎vs長渕ナイト」に行ってきたわけです。

Okaji君の長渕は、また竜太郎さんとは違う長渕。甘いルックスとソフトな声で歌う長渕です…なんて書くと竜太郎さんが渋いルックスとハードな声で歌う….となりそうですが(;^_^A
Okaji
なるほど同じ「夏祭り」でもこんなに違うもんなのか、でも彼は彼の長渕ワールド作っているなぁ~と思いながら聞きました。

ちなみにMCで思い出したのですが、今から7~8年前に日吉NAPでOkaji君とお会いしているんですね。今では超レアな竹原ピストルのライブでした。確か竜太郎さんと3人でラーメン食べたっけな。

そして井上君の拓郎。
彼の拓郎は45年ぐらい前のご本人のライブを彷彿させるようで、本当にそう思いながらタイムスリップ感覚で聞くのがいい。しかもレアな曲をやってくれるので、とても新しい発見があります。
井上ともやす
拓郎の未CD化音源に「僕が一番好きな唄は」というのがあります。というかあるようです。僕は井上君のステージで初めて知りました。
「あれから2年唄は世につれ 世は唄につれ変わってゆくが」という出だしで始まるこの曲は、1978年頃にライブでのみ歌われていた作品だそうです。
流行歌がどんどん変遷してゆく中で、自分はもはや売れっ子ではないかもしれないけど、「自分が一番好きな唄は」西城秀樹の「Young Man」でも松山千春の「季節の中で」でもなく「人間なんて」なんだよね~という歌です。

決して「これからも自分の歌を歌い続けてゆこう」みたいな安っぽい決意宣言曲とは違うんです。

彼がこの曲を歌った時代、音楽は急激に変貌を遂げていました。
今の比じゃないんです。2~3年違えばどんどん旧態依然とした音楽に成り果ててしまう。そんな時代です。

1970年代後半になるとフォークからニューミュージックやテクノミュージックの時代となり、多くのフォーク・シンガーは「何をやったらいいのかわからない。やれることがない(これは当時活躍したプロのフォークシンガーから実際に聞いた言葉です)」ということになり、シーンから消えてゆきます。

かのボブ・ディランですら落ち込んでいた時代だったんです。

拓郎は時代に左右されずにブレなかったんじゃない。
今更スタイルを変えることができない自分をよくわかっていた。変えようとした所で空しい努力となることもわかっていた。
それがかえって見苦しいことになることもよくわかっていた。だから変えられないし敢えて変えるまいと時代の流れるままにした。
そんな自分に対して自嘲気味にこれを歌っているんです。

改めて思ったのは、拓郎は予言者だったんじゃないかということ。
その時代時代における自分の立ち位置を俯瞰的に見通すことができたんじゃないか?ということでした。
そこを井上君の歌を通して改めて感じることができたのです。

さて、自分は生徒さんに「捨てることで拾える音楽もあるよ」ということを時々言います。

自分自身が高校二年の中盤からバンド活動を縮小し、聴く方を楽しむようになったり、2000年代の初めにCD屋さんを辞めざるを得なかった体験からそう言うのですが、固執することなく一度視点を変える事で新しい音楽と出会えるよという意味でもあります。

井上君はどうだったんだろう?
1981年頃、別に時代に逆らうわけじゃなくて、たまたまニューミュージック全盛の1981年に拓郎が好きだった。

「さだコース」なんていう名の「時代を嗤う」ようなバンドで音楽をやっていた。そして回り道もしたかもしれないけど、最終的にそれを貫いた。自分の立ち位置をいつも知っていたんだと思います。

ですから彼には敬意を表するし、今度は先輩後輩ではなく、お客さんの立場で彼の音楽に接することができることを本当に誇りに思うのです。

しかもそれが「くんくんしーらや」である。色々な縁が円となり、ぐるーりと回ってそこにあることがとても嬉しかった。

いま、彼のCDを聞きながらこれを書いています。
時代に左右されない圧倒的な力強さがあります。そして高校の頃の風景が綴られた楽曲たちには懐かしさを感じずにはいられないのです。

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