倉橋ヨエコ 弾き語りライブ at 東京キネマ倶楽部

ライブレポ

この日のハードさったらない。
まず長女がテレ朝の「30人31脚」南関東予選に出場するので、パシフィコ横浜まで応援に行く。

30人31脚

15時30分から予選開始だったのだけど、結果は****。

17時すぎに会場を飛び出して、車に飛び乗ると「デロリアン」並みの急発進で東京へと向かう。車の中で運転しながらおにぎりをほおばり、さらに悔し泣きをしている娘をなぐさめる。「クラスの足の速い子だけを集めて出場しているチームだってあるんだ。君のクラスはみんなで出ようって決めて、速い子も遅い子も夏休みのあいだ、頑張ってきたんだからいいじゃないか。今日はヨエコさんの音楽を聞いてスッキリしようね」。

そう、今日は倉橋ヨエコの「ザ☆お着物狂鍵弾き語りツアー」のライブとカチ合ってしまったのだ。

倉橋ヨエコ 東京キネマ倶楽部

18時ちょうどに東京の鶯谷に到着する。東京キネマ倶楽部におけるライブ開始時間だ。とりあえカミさんと2人の娘を会場前で降ろして席の確保に行かせる。僕は駐車場を探しに手間取って、ライブハウスに入ったのが18時18分ぐらいだったけど、まだライブには間に合った。相変わらず音楽に関しては強運だ。席は1階自由席の最後尾だったが、ステージまでの距離は15mほどなので問題なし。

この日のライブに来ているのは、僕らバカ親子4人だけじゃない。タヅちゃんもだ。
タヅちゃんにはずっと前に教室でヨエコのPV(スペースシャワーTVか何かでオンエアされたときの「恋の大捜査」だったと思う)を見せてあげたのだけど、それがキッカケだった。それ以来彼女はヨエコにハマってしまい、すべてのCDを「大人買い」したそうだ。「今や最も好きなJ-POPアーチスト」とのこと。大変光栄でならない。今回のライブチケットも、タヅちゃんが下北沢で行われたレコ発ライブを見に行った際、会場から僕に電話をくれて、購入してきてくれたものだった。そういえば最近カッちゃんもハマっているそうだ。こんな風にヨエコの輪は確実に広がっている。

ダンスホール 新世界

東京キネマ倶楽部は昔はグランドキャバレーだった。ヨエコの音楽に「昭和歌謡」のアヤシゲな雰囲気があるのと同様に、このハコも昭和30年代~40年代のキッチュでアヤシゲな雰囲気をプンプン匂わせている。右の画像は同じビルにある「ダンスホール 新世界」だけど、この雰囲気ですよ。この雰囲気。かつて店内のBGMを演奏したり、ホステスとお客さんにチークダンスを踊らせたバンドステージが今でもそのままライブステージに使われている。周囲に色あせた幕が巡らされている。ステージ左手にはロココ風の大げさな意匠をほどこした手すりの階段がある。きっと刑事役の天地茂がホステス役の三ツ矢歌子から犯人の消息を「あたくし、知りませんわ!」とにべもなく否定されてしまったのは、こんな場所だったのだろう(そういう映画があるかどうかは知らないが)。

今日のライブはこのようなバンド形式ではなく、ヨエコによるピアノの弾き語り。しかも前回はヤマハのグラピだったけど、今回は何とスタンウェイのグランドピアノを持ち込んでのライブだ。ヨエコの着物も前回に比べると、硬い麻の着物ではなく、紺色が鮮やか柔らかい絹の着物になっていた。ピアノ弾くときはこの方が腕は動かしやすいと思う。300人は入れるライブ会場も満員だ。詳しいセットリストやMCに関しては木の葉燃朗さんによる「いちファンによる倉橋ヨエコ応援ブログ」に譲るけど、MCの中で「最近子連れのお客さんが増えている、子供にこんな危険な歌を聞かせて申し訳ない」なんて言っていた。僕の次女(8さい)は、今回のライブでファンレターを書いて持ってきて、スタッフの人に渡していた。普段「ヨエコさんって、なんであんなにグジグジとした歌を書くんだろう」なんて言っている次女のことだから、なんだか失礼なことを書いていないかヒヤヒヤする。だけど、CDを全部自分の部屋に持ち込んで姉妹で聞いていたかと思えば、「つぶつぶのふまんいり~」「そんとうそ~」と合唱し、イントロだけですべての曲名を言い当ててしまう子供たちだから、彼女の想いはきっと通じていることだろう。
そんな子供たちがヨエコの歌にあわせて口ずさみながら、微妙に体を揺らしている。その顔は普段見たこともないぐらい、真剣そのものだった。途中でカバー曲として小坂明子の「あなた」を歌った。別れた恋人への想いやかなわなかったあこがれに関する歌なのだが、ヨエコが歌うとモロに「アブナイ妄想の歌」になってしまうのだから面白い。前回レコ発ライブだったせいもあって、アルバム「色々」の楽曲が中心だったけど、今回は初期の「感謝的生活」や「屋上にて」などの初期の名曲もあったりして、幅広い弾き語りライブだった。ヨエコのMCによれば、「屋上にて」は最初期に書いた曲で、これをオーディションに送って返事が来たのが、この業界に入るきっかけになったたのだという。へぇ~あのフレンチシネマ風の名曲が初期の秀作とは....ただただ恐れ入った。さて、ライブ・ステージにおけるバンドサウンドの完成度ではTheatre Brookに大変な魅力を感じる。だけど、ピアノの弾き語りの完成度ではヨエコに適うアーチストはいないだろう。縦横無尽に動き回る右手の動きも、それを支える左手も実に個性的だ。フツーのキーボードプレイヤーが2つの音符で音を出すところを、平気で10の音でリフを構成してしまう。あえて不協和音のアルペジオをリフに使ったり、時にはクロスさせて右手の上を飛んでゆく。とにかく重装備でスキのない軍艦みたいなピアノプレイ、そして十二単を着ているかのようなぶ厚いアレンジワークだ。そしてあの強烈で個性的なボーカル。さらに楽曲の完成度の高さと強烈な音楽性......これででチャージ3000円は安すぎる!和には和なのかどうかはわからないけど、帰りはタヅちゃんとともに皆で銀座の「鳥ぎん」で釜飯。
帰りの車の中ではヨエコの歌を合唱。子供たちはヨエコの事を語り合えるお姉さんの登場に大喜びだったし、ダヅちゃんもそれは同じ気持ちだったようだ。

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