マサトシ at 大船ラドン温泉

ライブレポ

大船....といっても横浜市栄区にある大船ラドン温泉。この「20世紀パラダイス」で毎月行われるカラオケ大会の上位入賞者たちによるグランド・チャンピオン大会にマサトシさんが出演するので、応援に行ってきた。

.....いや応援にかこつけて「戦士の休息」をしたというのはまったく正解だ。
大会開始時間の2時間前に到着し、さっそく温泉に飛び込む。じっくりつかる。深海の底へ沈んでゆくぐらいつかる。体に効いてきたところでサウナに入り、中のTVで団十郎と海老蔵の勧進帳を見る。そして滝と露天風呂の前にある椅子に腰掛けて、頭上の散りゆく紅葉をボーッと眺めていた。

1時間半ほど温泉に入っただろうか、甚兵衛姿で大宴会場へ。
大宴会場(おそら横浜一の広さだろう)は3階までの吹き抜けになっていて、体育館なみの広さ。
大船ラドン温泉大宴会場の天井
昭和50年代のレトロゴージャスなつくりがいい。あと10年もすればいい感じになるだろう。周囲を見渡すと70代以上のおじいさんとおばあさんが大半。おもいおもいの格好でくつろいでいる。
ステージでは通常の飛び入りカラオケステージが進行中。誰でも事前にエントリーすれば歌える。
ただの日帰り温泉ではない。癒しの場であり憩いの場であり談笑の場であり、歌の表現の場でもある。近隣に日帰りスパの「湯快爽快たや」ができても、生き残り、健闘している理由がここにある。

小一時間ほどして、ひと風呂浴びてきたマサトシさんとカミムと合流。
その前に何か食べようと、サービスのおばちゃんを呼んだが、気付いてくれないので、追っかけていって注文していた。あとでカミムに聞いたら「ここではメニューを頭上に掲げて大きく振る」のがローカルルールなんだそうだ。なるほど。
演歌をバックに生姜焼定食、なかなか美味しかった。

13時過ぎからカラオケ・グランド・チャンピオン大会が始まった。
大船ラドン温泉カラオケグランドチャンピオン大会
まずは出場者がステージにズラリと並ぶ。毎月行われるカラオケ大会で上位4位までに残った勇者たちだ。中でも一番若いマサトシさんはエントリーNo.8。ステージからこっちを向いて手を振っている。

大会はプロの歌手を審査員に呼んでの本格的なもの。
審査員
さすが各月のチャンピオンレベルだけあって、なかなかのもの。とりわけ島津亜矢の「お徳」を歌った方は素晴らしかった。

そしてマサトシさんの番。曲は尾崎紀世彦の「また逢う日まで」。演歌ばかりのエントリーナンバーの中では異質でありながら、ここに居る大勢のお客さんとは同時代性のある曲をマサトシさんはぶつけてきた。

用意したビデオカメラで撮影をはじめる。身内びいきなのではない。今までのエントリー中では圧倒的に素晴らしい出来だった。声量は一番響き渡っていたし、歌唱も安定していた。安定していなかったのは僕のビデオカメラ。見ている方が今までの発表会にないぐらい緊張して、カメラを持つ手が震えているのが自分でもわかった。
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もともと「大宴会場」なわけだから、お客さんは全員ステージを注視しているわけではない。
だいたいおしゃべりの声で会場内はどよめいているのだけど、マサトシさんのボーカルが「話し~たくない」とボルテージを出した瞬間、その響きが一瞬やんだ。それで会場はいく分静まりかえり、そんな中を歌声が流れていった。

審査委員長の講評は「お腹の底から声が出ていて、リズムも乗れていて大変よかったです」というもの。それ以前の7人のエントリーでは、かならずウィークポイントを指摘されていたから、それがないということで、「よっしゃぁ~」と思った。さらに委員長は「お客さんが注目するということは、それだけいい歌唱ということなので、その点にも注意して評価しています」と言った。

歌い終わった直後、マサトシさんは常連のお客さんから「優勝決定だね!」と肩を叩かれていた。さらに8名のエントリーを聞いてゆく。後半で一番印象に残ったのは70過ぎのおじいさん、昭和30年代の近江俊郎風のハイトーンを活かした歌唱法で、懐かしい雰囲気、ほのぼのとした雰囲気を漂わせていた。常連さんのようで、ギャラリーの応援も盛り上がっていた。カミムと「年功序列的な評価があったらヤバいね」なんて話をする。

そして16名のエントリーが終了し、審査中にプロ歌手の田中みきさんのステージとなった。
田中みき
この方は初めて知ったけど、綺麗な方で歌唱力も抜群。そして実に艶っぽくてよかった。

さあ、そしていよいよ結果発表。3位が島津亜矢の「お徳」を歌った人、そして準優勝発表。
マサトシさんの名前が出た。発表された際に、お客さんたちがその「意外な結果」に「えっ」と一瞬どよめいた。きっと多くの人が「優勝候補」だと思ったからだろう。しかし初参戦で準優勝というのは、ラドンのカラオケ大会史上でも例のないことなんじゃないかと思った。それだけでもこの結果は優勝に匹敵する素晴らしいものだと思った(1位はやはりあのおじいさん)。
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何よりも素晴らしいのは、マサトシさんファンみたいなのが出来上がっていた。あっちこっちで(何と風呂の中でも!)おばあさんやおじいさんに呼び止められて「良かったよ!」と言われたり、「良かったけど残念だったねぇ」と、なぐさめられたり....

「マサトシさん、一曲で地盤築いちゃったよ」と僕は思った。11月のWinter Liveでこじこじとコラボした「カナダからの手紙」では、若い女性を見守る年上の男、そんな新しいイメージが生まれたマサトシさんなのだが、今回は全く逆のパターン....何と、ご老人から励まされ、応援される頼もしいお兄ちゃんだ。

ファンができて、後押しする地盤ができて.....そうしたことがやはりここでは大切なんだろう。
でもそれって、本質的には音楽が売れてゆくための大前提ではないだろうか?
このラドン温泉は、その世界をミニマムに具現化した世界だったのだ!
そんなことを思った。

再び温泉につかったあと、「戦士の休息」は終了した。
僕、マサトシさん、カミム3人とも夜から次のスケジュールがあるという忙しさだ。
僕に関して言えば、夜からもう一本のライブが待っていた。
(つづく)

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