千佐都のライブ at “赤い風船”

ライブレポ

22日のSpring Liveが彼女にとって初めてのステージだった。
それからわずか1週間後、千佐都の2度目のステージが上大岡で行われた。

教室から三脚つきのビデオカメラを担いだ僕は(この街ではかなり異様な姿ではある)、北さんと"いいだこ"と3人でぼてぼて歩いて「赤い風船」に向かった。
最終的に会場に集まった「ご存知上大岡ゆーえす&関連軍団」はharuさん、Chiyちゃん、北さん、59喉、カミム、いいだこ、シンちゃん、マリちゃん、しょうこちゃんのお母さま、そして僕の10人!
ご存知上大岡ゆーえす軍団
このライブの主催は「アコ趣味」という非営利団体。
「アコ趣味」は舛本忠久さんという方が主催しており、『やり手よし』『聴き手よし』『世間よし』をスローガンにかかげ神奈川県を中心にアコースティック系の弾き語りライブを行ってらっしゃる。上大岡では「赤い風船」前の広場で定期的にライブを行っている。出演したいシンガーは5000円程度の参加費でチケットノルマなしのライブを行うことができる。この日、出演したのは7組、このうち千佐都ちゃんのステージは4組目だった。
アコ趣味 出演順
1時30分、彼女のステージが始まる。一曲目は僕のお気に入りの「Orion」。
アップテンポの曲なんだけど、曲の構成もしっかりしているし、メロディーも枝葉の部分まで作り込まれている。いくら頭をひねってもデジャヴ(既聴)感がなくて「彼女の音楽」というものがヒシヒシ伝わってくる。高校2年生(これがウリ)の女の子が作ったとは思えないほどの完成度だ。
もっとも本人は「月明かり」の方を気に入って欲しいらしい....ゴメンな。CDショップのバイヤーなどというヤクザな仕事を経験した人間ってA面じゃなくてB面.....いやいやカップリングの曲を気に入る傾向があるのさ。でも、こちとら日本ではじめてマスメディアにむかって「ブリトラ」をプッシュした人間だぞ...比較対照とするのも何だが....
千佐都
そして、その肝の据わりかたに驚く。彼女のトークはとても落ち着いているし、くすぐりもしっかり持っている。そして何よりも自分の音楽に自信を持って、それを直球で聞き手に投げてくる。僕はビデオカメラをまわしていたのだけど、歌いながらもお客さんの動きを目線で追っているのには驚いた(言っておくけど、彼女はこれが2度目のステージなのだ!)。
千佐都
お次は「この方の世代ではないんですが」という前フリで尾崎豊の「I Love You」だ。考えてみれば尾崎は僕と同じ年(僕と4日違いで生まれている)、彼が死んだ時、彼女はまだ赤ん坊だったはずだ。

そして彼女の音楽を聴いていて思うのはこの点だ、DylanやJoan Baezあたりから始まって80年代初頭に落ち着いたオーソドックスなフォークスタイルでもない、大半のストリート・シンガーの曲が"ゆず"のカヴァー曲に聞こえてしまった10年前からのスタイルとは若干の共通項を感じるもののやはり違う。異なる地平線から出てきた平成生まれの(彼女風に言えばモー娘。世代の)フォーク・スタイルというものを感じた。

お次は「私の部屋」というオリジナル、これまたアップテンポのスタイル。イントロでリズムに乗って楽しそうに左足でステップを踏んでいるのが印象的だった。
千佐都
そしてラストは「月明かり」だ。レッスン中にharuさんはこの涙腺をウルウルさせた。北さんはこの曲をカバーしたいと言った。そんな曲が静かに流れていった。観客はこの歌に引き込まれて静かに聞き入っていた。おじいさんが携帯で彼女の画像をおさめていた。

僕も北さんも"いいだこ"も刺激を受けている。創造する力に対する刺激だ。ゆっくり話する機会がなかったのが残念だったけど、真逆の音楽世界をつき進んでいる「59喉」もそうだろう。北さんの「清明の頃」、59喉の「ヘーゼルナッツの受難」、いいだこの「イメージの彼方」、この素敵な3曲もまた千佐都に刺激を与えているに違いない。音楽を愛する人だけが相互に感じることのできる不思議な刺激だ。それを感じることができてよかった。先週のライブもそうだけど、生徒さんの真摯に歌う姿を見て、とてもパワーを受けている。

おそらく僕の書いたこの文章が駆け出しの千佐都にとって初めての"らいぶれぽ"となるでしょう。拙文ではあるけど、それが書けたことを、とても光栄に思います。

ライブレポ